第88章 *緊急リターニング*
『ん..ありがと。ねぇ、リィさん』
リリア『なんだ?』
『...お姫様は、きっと大丈夫だよ』
リリア『.....ああ』
それでも重苦しい不安が伸し掛かり、どうしようもない感情に眉間にしわを寄せて俯いた。そんなリリアを心配そうに見つめていると、なんの前触れもなしにそっと膝に頭を乗せられる
リリア『..少し休む』
『ん..分かった』
バウル『!!(初めて見るわけでは無いが、やはり右大将殿がこんな風に甘えているなど、信じられん)』
今度は誰の目も気にせず堂々とレイラの膝枕で仮眠をとる姿に唖然としたが、先程まで苦悶に満ちていたその表情が幾分か穏やかなものになっていることに気がつくと、バウルもどこかホッとしたような心地で、リリアの髪を撫でるレイラを含めた2人を優しい眼差しで見守った
リリア『(またこの匂い..妙な心地だ。傷の痛みが少し薄れてる気が..)』
『(リィさんの怪我が少しでも良くなりますように)』
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休憩を挟み再び飛行術による移動を再開していると、眼下の荒野の地に幾重の線のようなものが見え始める。それは大型車両が通ったような轍の跡だった
シルバー『見ろ、地面のあちこちにキャタピラーの跡が..』
グリム『草も木もめちゃくちゃになっちまってるんだゾ』
よく目を凝らすと、本来ここに深々と生い茂っていたであろう木々はなぎ倒され、あの掘削機が通ったせいか背丈の短い草花は踏み潰されていた
『ひどい..』
セベク『銀の梟と近衛隊がここでぶつかったのか?』
近衛兵『ギャギャーッ!!』
バウル『!!右大将殿、2時の方向に誰か倒れております!』
リリア『あの鎧は..転移魔法で先に戻った近衛兵か!?』
わずかに残った木に背を預けるようにぐったりとしていたのが近衛兵だと分かると、リリアたちは直ぐ様降りて安否を確認しに行った
姿がはっきり見え始めたその時、レイラはその近衛兵の仮面の形にハッとしてすぐさま駆け寄っていく