第88章 *緊急リターニング*
暫く飛行を続けていると、次第に全員に疲れの色が見え始め、飛行速度も最初より落ちてきていた
バウル『流石に隊の者たちに限界が来ているな。紅が原を一気に飛んできたのだから、当たり前か..右大将殿、小休止を取りましょう』
リリア『仕方ねぇな。確かにこのままじゃ野ばら城にたどり着いても戦えない奴が続出しそうだ。だが、取る者もとりあえず退却してきたから、食い物も水もねえぞ』
『ご飯ならあるよ』
リリア『なに?』
シルバー『パンとベーコンと水なら..皆さんの分のご用意があります』
バウル『おお、でかしたぞ。しかし、一体どこで調達した?』
シルバー『東の砦の厨房にいた料理人が持たせてくれました』
バウル『なにっ?人間が!?』
セベク『"俺たち料理人は腹が減ってるやつに飯を食わせるのが仕事なんだ"。" 妖精の口に合うかは分からないけど持っていきな"と..』
『『『....』』』
敵対しているはずの人間が、何故妖精である自分たちに食事を与えてくれたのか分からず、リリアたちは疑いと戸惑いに暫し口を閉じた
リリア『敵に送られた塩でも、舐めたい状況だ。ありがたくいただこう』
開けた山の平地に降り立つと、料理人たちからもらったパンとベーコンを配り、全員は暫しの休憩を取ることにした
『むぐ..美味しい』
ユウ『あの人たちに感謝しないとね』
グリム『ふへぇ〜..疲れたんだゾ』
シルバー『まだ道のりは長い。今のうちに体力を良く回復させておくんだ』
シルバーの言葉にゴロンとその場で寝転がるグリムを嗜めるユウたちを残し、レイラはそっと立ち上がった
『リィさん、体、大丈夫?』
リリア『まだ本調子とはいえねぇ。まあセベクに乗っけてもらってるから、その分休めてる』
『良かった。でもまだ無理しちゃだめだよ』
リリア『俺より自分を心配しとけ。学校でもこんな長時間飛行したことなんてねぇだろ?』
『ん。でもまだ大丈、わわわっ!』
戦線を抜けたときにシルバーたちにしたように頭をワシャワシャと撫でると、"強がんな"とフッと小さく笑みをこぼした
リリア『目に見えて疲れてんのバレバレなんだよ。時間は短いがちゃんと休憩しとけよ。このあともかなりの時間飛ぶからな』