第88章 *緊急リターニング*
『ぁぅ..で、でも大丈夫なの!"二人は"戦わないから!私達は合図が来るまで動かなくていいの。動いちゃだめなの!』
リリア『はあ?一体どういう..』
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茨の国・荒野
砦を出て少し進んだ先の荒野には、こちらへと進軍する鉄の者たちの集団が迫ってきていた。砂埃を上げ日に反射する鎧と武器が鈍い光を放つ。そんな集団と対峙するように立つ2つの姿をリリアは数十メートル先に見つけた
リリア『いたぞ、あのガキども』
『だからだめだってば!もうちょっと待って』
リリア『あいつらが鉄の矢まみれになってもいいってのかよ』
ユウ『だからそうならないための策なんですってば。直に合図が来る。その時に全速力で飛べるよう、ここで待機です』
『リィさんはワニさんと。グリムはユウを乗っけて』
グリムとレイラはそれぞれ手にした箒に跨り、視線の先にいるシルバーたちを見つめながらその時をじっと待つ
リリア『バウル、てめぇはなんか知ってんのか?』
バウル『いえ、策の全容を知らせずに飛び出していったものなので..』
『大丈夫。"あの子"たちが頑張ってくれる』
『『あの子たち..?』』
『...!!来た』
ピィっ!!
リリア『口笛?』
突然聞こえた口笛に動揺するのも束の間、それを合図に近くの森がザワザワと蠢き、黒い粒が大群をなして上空を覆う
同時に地面にも小さく動く影が大量に現れ、それら全てが鉄の者たちへと向かっていく。その影に翻弄される鉄の者たちが悲鳴をあげて、辺りは混乱に包まれた
リリア『なんだ、あれ..』
『シルバーさんがね、鳥さんとか動物さんにお願いしてあの人たちにイタズラしてもらってるの』
ユウ『動物に好かれてる先輩だからこそできる、業(わざ)って感じですよね』
セベク『鉄の者たちが怯んだぞ!今だ!』
『!セベクが叫んだ。行こ』
グリム『い、行くぞユウ!オレ様にしっかり捕まってろ!』
ユウ『頼んだよグリム!』
『ワニさんたちも行くよ』
セベクの合図をきっかけに、グリムとレイラを先導に一斉に箒を走らせ、前線で待つ二人の元へと急ぐ