第88章 *緊急リターニング*
再び鳴き出した腹の虫が今度は2箇所から聞こえ、その一人であるグリムは力なくその場でペタンと腰を下ろした
グリム『ふな〜..セベクのせいでオレ様の腹の虫まで騒ぎ出しちまったんだゾ〜。最近ずっと干した肉とか木の実ばっかりだったから..じゅるっ』
『んぅ..私も、お腹、空いた』
ユウ『わっとと。レイラもお腹空いちゃったのか。可愛いね』
もう一人の虫の主であるレイラも厨房の匂いにつられ空腹を感じると、ユウの腕に寄りかかりスリスリと甘えだした
そんな一同に先程まで怯えた様子の料理人の男性にわずかに笑みがこぼれた
料理人『ふん。ならさっさと言えってんだ!お前、パンとベーコンを包んでやれ 』
料理人『あいよ』
セベク『き、急に何なのだお前たち!?僕は施しを受けるつもりなど..!』
料理人『俺たち料理人は、腹が減ってる奴に飯を食わせるのが仕事なんだ。ヘンリクどもが急に出ていっちまって、食材が無駄になるところだったし、ちょうどいいや』
にこやかに笑う料理人たちに空気がほぐれると、奥で煮込まれているスープに目をつけたグリムが強請る。それを嗜めるセベクとわちゃわちゃしていると、女性が大きな包みをシルバーへと手渡した
料理人『ほら、パンとベーコン。それと飲み水も。妖精の口に合うかはわからないけど、持っていきな』
シルバー『ありがとう、恩に着る』
料理人『..本当に似てる』
シルバー『え?』
『(また..)』
セベク『おい、シルバー!無駄口を叩いていないで、さっさと物置の場所を聞け!!』
シルバー『あ、ああ』
料理人『物置は上の階の北側だよ』
シルバー『分かった。貴方たちは俺たちが去るまで、厨房に隠れていてくれ。驚かせてすまなかった。どうか元気で』
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厨房で腹を満たすと、料理人たちが教えてくれた北側の階段を登り上の階へと足を踏み入れた
ユウ『お腹いっぱいになった?』
『いっぱいだと飛べないから、半分くらいにした。でもすごく美味しかったから、元気出た』
ユウ『良かった』
シルバー『料理人たちが言っていた物置はこの辺りのはずだが..ん?』