第88章 *緊急リターニング*
『『!!!』』
『ひゃっ!』
突然行く手の先から聞こえた物が倒れる音に、穏やかだった空気がピンと張り詰める
『なに、今の?』
シルバー『地下からだ。親父殿たちを狙う鉄の者か?』
セベク『ふん。お祖父様たちの手を煩わせるまでもない。僕たちが成敗してやろう。それに、城や砦の地下には厨房や洗濯室があるのが定石だ。箒なども置いてある可能性が高い。行くぞ!!』
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銀の梟の本拠地・地下
周囲を警戒しながら石の階段を降りると、恐らく音の出処である大きな扉が目の前に現れた
シルバー『このドアの向こう..人の気配がある。レイラ、一旦ユウたちのところへ』
『ん』
セベク『お前たちは下がっていろ。行くぞ、シルバー..』
レイラたちを下がらせると、シルバーとセベクは息を合わせて一斉に目の前の扉を蹴破った
ガンッ!!!
少しの砂埃が舞う中、部屋にいたのは甲冑を纏う銀の梟ではなく、使用人のような身なりの男女だった
料理人『ひぃっ!い、命だけは、命だけはお助けください!』
料理人『私たちはただの雇われ料理人で..えっ?』
突然ドアを蹴破ってきたセベクたちに恐怖で震える料理人たち。しかしシルバーの姿を目にした途端、その恐怖に染まった表情が安堵へと変わる
料理人『ああ、なんだ!貴方様でしたか。驚かさないでくださいまし!』
シルバー『え?』
料理人『もう妖精どもをやっつけてご帰還されたんで?いやぁ、流石です!』
シルバー『妖精を?貴方たちは何を言っているんだ?』
『(誰かと、間違えてる?)』
料理人『はっ..あんた!よく見て!この人、"あの御方"じゃないよ!』
料理人『ほ、本当だ!よく見りゃ御髪の色が違うじゃねぇか!』
料理人『他人の空似..じゃ、じゃあやっぱり茨の国の妖精?お、おしまいだ..ううっ』
料理人『ああ、もうすぐ生まれる孫の顔が見たかった』
シルバー『待ってくれ。俺たちは貴方たちに危害を加えるつもりはない。探し物が見つかればすぐにここを立ち去るつもりだ』