第87章 *懐刀インパクト*
周りで様子を見ていた住人たちから戸惑いと恐れの声がザワザワと響き渡る。好奇心で見に来た者達も怯え慄き、這いつくばって逃げ出す者までいた
ユウ『ちょ、ちょっと待ってください皆さん!この子も、他の黒兎の人たちも貴方達に酷いことは絶対しません!!』
シルバー『そうだ。あなた方は誤解している!』
セベク『それに、先に襲ってきたのはこの者たちだろう!!』
必死で擁護するユウたちだったが、一度植え付けられてしまった恐怖の種は簡単には消せず、こちらを見る視線は冷たくなる一方だった
『....そう』
誰にも聞かれず溢れた呟きは悲しみを帯び、伏せられた深紅の瞳に淀んだ炎が揺らめいた
無言でペンを振って鉄の者たちを静かに地に下ろすと、その場で動けず座り込む行商人に歩み寄り上から見下ろした
行商人『ひっ..!』
『謝って。この人達に化け物って言ったこと..謝って』
そして今度は鉄の者達へとその視線を向ける
『貴方達も謝って。妖精さんたちを悪く言ったことを。妖精さんたちはみんな優しいの。そんな人たちの大事な場所を奪った貴方達が、この人達を悪く言わないで』
鉄の者『な、何故だ?何故妖精の味方をする!?』
『早く、謝って』
絶対零度の瞳が有無を言わさず、彼らへ謝罪を急かす。鉄の者たちも行商人もすっかり怯えきり、行商人に至っては泡まで吹きそうになっていた
鉄の者『よ、妖精たちなど..っ!』
鉄の者『撤退だ!急げ!』
バウル『なっ..待て、貴様らっ!!』
一目散に逃げ出した鉄の者たちを追おうするが、リリアは手で制止したため、バウルは深追いすることはなかった
行商人『わ、分かりました!謝ります!..化け物も言って申し訳ありません!!店の売り物も全て差し上げますから、どうか見逃してください..っ!』
バウル『そんなもの..っ!』
リリア『侮辱の慰謝料としてもらっときゃいいじゃねぇか』