第87章 *懐刀インパクト*
リリア『だから最初に言っただろ。"他者を操る能力"ってのは、黒兎に現を抜かしたやつらが勝手に堕ちて勝手に破滅して、それを黒兎のせいにしたいがために広めた悪評だ。実際の力ってのは"人を引き込むカリスマ性"だろ』
頭の後ろで手を組みながらこちらを見つめるリリアの言葉に、バウルの眉間にしわが寄っていく
リリア『そうなると要は俺たちを含めた周りの自己責任だ。幸せになろうが破滅しようが、それは自分のさじ加減でどうにかするしかねぇ。
黒兎側に悪意がないなら、な』
『私、悪いこと考えてないもん』
リリア『分かってる』
それだけ言って目を閉じたリリアを横目に、複雑な面持ちのバウルへと一歩近づく
『すぐに信じなくていい。ずっと疑ったままでもいい。でも、もう痛いことはしないで。何かあるならちゃんとお話しよ?
勝手に決めつけないで』
ザアァッと吹き荒れた風が二人の間を駆け抜けていく。互いに目をそらさず暫しの沈黙が過ぎる
バウル『..貴様の言うことは今でも信用することはできん。自分自身でも制御ができない力なら尚の事だ。
だが右大将殿の仰ったことも一理ある、と考えるべきなのだろう。貴様のその..庇護欲をそそる言動に周りが引き寄せられているのかもしれない。
ならばその可能性も考慮して一応言っておく』
『?』
バウル『貴様に手をあげ、腕を切りつけたことを..謝罪する』
まだ納得のいっていないといった表情で、それでも意を込めてほんの少し頭を下げる。まさか頑固なバウルがこうもあっさりと謝罪するとは思わず、リリアは叫びだしそうになったところを慌てて飲み込んだ
『!...ん』
バウル『だが忘れるな。何度も言うが、貴様のことは信用できん。これからはより監視の目を強化する。怪しい動きをすればすぐに問いただすからな』
『..ちゃんとお話してくれる?』
バウル『...ああ』