第87章 *懐刀インパクト*
ユウ『はい、あーん』
『ぁ..むぐ..』
ユウ『美味しい?』
『ん♪』
シルバー『口にあって良かった。思いの外骨が多い魚ばかりで残っていないか不安だったが、その様子だとちゃんと取れているようだな』
セベク『ふん!僕が下処理をしたんだ。完璧にできて当たり前だろ!』
感謝しろ!とドヤ顔で料理を頬張るセベクの隣で、ユウはひたすらレイラの口に料理を運んでいく
最初こそ驚いていた二人も数日もすればその光景も見慣れたもので、特にツッコむことなく美味しそうに食べるレイラを優しく見守っていた
『ユウ、全然食べてない。もう自分で出来るから、ユウも食べて』
ユウ『は〜い』
渋々レイラの口に運ぶ手を止めると、自分の皿をつつき出し、程よい味付けに舌鼓を打った
『(美味しい...』
ジッと見つめる深紅の双眸はまるで、物語のとある怪物のように彼の体を石のように動けなくさせる
睨んでいる訳ではないのに純粋な輝きで揺れるその瞳に見つめられると、その奥に吸い込まれそうになり一種の恐怖さえ込み上げてくるようだった
冷や汗が頬を一筋流れ、逸る鼓動が耳元鳴っているかのような振動と音に、バウルは目の前の少女が一段と恐ろしく思えた
バウル『..な、なんだ?』
『...』
バウル『何か言いたいことがあるから呼んだのではないのか?』
何も返事はなくただ己を見つめる少女に手まで震えだし、咄嗟に後ろへ回し隠した
バウル『(本当になんなのだこの女は..先程から見つめてくるだけで何も言わん。
..まさか、あの時の復讐を..!?)』
リリア『..とか考えてんだろ。アホかテメーは』
ベシっと鈍い音を立て背中に軽く叩かれ、振り返ると呆れ顔でリリアが背を叩きながら横に並び立つ
バウル『うぐっ!!なにをなさるのですか!』
リリア『レイラがわざわざテメーのビビリを改善してやろうと呼び出してんのに、そんな殺意丸出しな顔してんじゃねぇよ』