第87章 *懐刀インパクト*
『...恨んでないよ。ワニさんは私が分からなくて怖かっただけなんだと思うの。でもね、やっぱり凄く怖くて痛かったから..許さない』
リリア『恨んでねぇけど許さない、か。なんかお前っぽい回答だな。
お前の言うとおり、あいつは未知の能力を持つお前にビビって手をあげた。そのことに関して俺は咎めたりはしねぇ』
『ん、私もそこは怒んない。分かんないことってすごく怖いもん。あの時は、なんでこんなことするのって訳が分からなくて、痛くて怖くて泣いてた。
でも、落ち着いて考えたらほんのちょっとだけ分かる気がして..だからね、これから私のことをちゃんと知ってもらえるように、何かできたらいいなぁって思ってる』
リリア『...』
『ずっと分かんないままって、なんかやでしょ?それに、もうあんなことしてほしくないし』
抱きしめたグリムに頬を寄せながら静かに語るその横で、ジッと見つめながら聞いていたリリアは手を伸ばし少し垂れた耳を指でなぞった
『ひゃん..っ//..な、なに?』
リリア『いや、お前らしい甘っちょろくてふわふわした考えだなって思った。だいたい、自分を殺そうとしたやつの気持ちに寄り添って、その上そいつのために改善策を考えようなんざバカにしか見えねぇぞ』
グリム『オメー、それとこいつの耳イジることと関係あんのか?』
リリア『触ってくださいって言わんばかりに動かしてるこいつが悪い』
『ぇ、私が悪いの?』
リリア『とにかく、俺はお前がお人好し過ぎて引いてるってことだ』
『でも..それ以外出来ることないし。これからまだ一緒にいるんだから、ちょっとは良くしたいだけ』
リリア『..いつか、他人のために命捧げて死にそうだな、お前』
あまりの利他主義に呆れてため息も出ず、これからの人生で苦労しそうだなと哀れみの目を向けた