第87章 *懐刀インパクト*
『ぅぅぅ..ユウ、怖いよ..』
ユウ『ん..レイラ?大丈夫だよ。僕がついてるからね』
うっすらと目を覚ましたユウは、震える体を抱きしめ安心させるように耳元で優しく囁いた
『っ、ごめん。ごめんなさい..ユウ』
ユウ『何で謝るの?悪いことしてないでしょ。僕こそごめんね。守ってあげられなかった..痛かったよね』
『ん..すごく痛くて怖かった。でも..』
疑いと殺意の中に潜んだ、自分への恐怖の色を滲ませたバウルの瞳を思い出す。未知への恐怖は自分にもあるものだと思えば、彼が向けた感情は分からなくもなかった
『..あの人は、私のことが怖かっただけなんだと思って..そしたら、』
ユウ『だめだよ』
『え』
ユウ『そうやってまた、"自分を傷つけた人はなにか理由があるんだ。仕方なかった"とか思って許そうとしてるんでしょ..そんなのはもうだめ。
ちゃんと怒ってよ。許さないって言ってよ。酷いことされたことを自分のせいにして、相手を簡単に許さないで』
優しく頭を抱えこみ悲痛な声で懇願する。学園の誰よりも付き合いが長く、様々な悪意に傷つけられ貶され、その度に相手に寄り添い何だかんだ許してしまう所を何度も見てきた
言葉での暴力ならまだしも、本当の意味で殺されかけたというのに、今回も相手の心情を汲み取って許そうとしている
それがユウにとってはもう嫌で仕方ない。どうしてそこまで他人に尽くすのか、どうして自分が悪いのだと、どうして仕方ないと言ってしまうのか
ユウ『..大事にしてよ、自分のこと』
『ユウ..』
ユウ『セベクに抱っこされて、腕から血を流して苦しんでる君を見たとき、息が止まって頭が回らなくなったんだ。このまま死んじゃうんじゃないかって..怖かった』
『..ごめん。私、みんなに迷惑かけてばっかりだね。こんなにユウを悲しませちゃった..
(やっぱり、私がいないほうが幸せなのかな)』
ユウ『(またすぐ謝る..)..もう暫く寝てていいよ。傷はもう塞がったみたいだけど、疲れてるでしょ。僕もここにいるから、ゆっくりおやすみ』