第87章 *懐刀インパクト*
揺らぐ深紅の瞳が明らかに何かを隠していると気づくも、特に深追いをすることなく小さなため息だけついて背を向けた
リリア『お前がそう言うなら何も聞かねぇが、その辛気臭い顔で俺達の士気を下げることはすんじゃねーぞ』
『ん..ごめんね』
ユウ『レイラ..』
隣に立つユウが心配そうに手をやんわりと包み込む。その大きさと温もりに小さく笑うと、"大丈夫"と手を握り返した
シルバー『おはよう、2人とも』
『おはよ、シルバーさん』
ユウ『おはようございます』
シルバー『今日も長くなりそうだ。気を引き締めていこう』
『..んふふ..』
流れるように撫でてくるシルバーの手に、気持ち良さそうに目を細めた
セベク『レイラ』
『ん?』
バウルとの話が終わったのか、こちらへと戻ってきたセベクはまだ気まずさが残るのか、頬をかきながら複雑な面持ちをしていた
セベク『..お、』
『お?』
セベク『おは、よう..』
ユウ『(初恋中の中学生か)』
『んふふ、おはよ』
自分とちゃんと関わろうとしてたどたどしくなる態度に、おかしくなって小さく笑みがこぼした
ーーーーーーーーーーーーーーーー
リリア『さて、いよいよ銀の梟どもの縄張りに踏み込むぞ』
バウル『紅が原を川沿いに東へ。それが砦への最短経路ですが..平地で隠すものも少ないですし、銀の梟との遭遇率が高くなりそうですね。ここから少し北に行ったところに、ミスティウムを鍛える鍛冶場があります。ここで一度、我々の魔石器を手入れしておくのも良いかと』
リリア『行方不明者を捜すなら、竜尾岳をぐるりと見回っていくルートもありだな..ふむ』
先頭を歩くリリアが地図を広げながら進行ルートを模索していると、少し後ろを歩いていたレイラの耳に微かに金属音が聞こえてきた