第87章 *懐刀インパクト*
シルバー『セベク、起きているか?』
ちょうど眠りに落ちそうなタイミングでテントの入り口が遠慮がちに開かれ、外からシルバーが顔を覗かせた
セベク『なんだ』
シルバー『寝ているところすまないが、1つ話したいことがある。これは親父殿から俺だけにしか教えられていなかったことだが、今のお前になら伝えてもいいと思って..』
セベク『?なんの話だ。もったいぶらずに早く言え』
微睡む瞼を擦りながら体を起こすと、中に招き入れたシルバーと対面で座り耳を傾ける
シルバー『ああ。だがこのことは、ユウとグリム以外には他言無用で頼む。
..話というのは、ナイトレイブンカレッジに来る前、レイラがどのように生きてきたのか、というものだ』
セベク『!!』
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そんなことがあった日の正午、再び一団は進行の再開を始めていた
バウル『貴様、目が腫れているぞ。虫にでも刺されたか?』
セベク『いえっ、お気になさらず。ただのむくみですので』
夜が明けてからもしばらく起きていたため、まだ少し眠そうにする目元が、昨日の号泣でほんのり赤くなっていた
バウル『そ、そうか、ならばいい。病の者を連れて行くわけにはいかんからな!』
リリア『レイラ、お前も目元が赤くなってんな』
『ぇ..ぁ、ほんと?ぁぅぅ..』
リリアの長い指の背がそっと赤みを帯びた目元をなぞる。まさか出発の時まで長引くとは思っておらず、可愛くない姿を晒してしまったことに恥ずかしそうに目を伏せた
リリア『..泣いたのか?』
『リィ、さ..?』
リリア『誰に泣かされた?』
静かな声色に僅かな怒りが混ざり合う。自分でも驚くほど、目の前の小さな兎が誰かに泣かされた可能性に、心の奥底からフツフツとした怒りが湧いていたことに気づく
今のリリアに昨晩の事を正直に告げれば、間違いなく被害者が約1名出ることはレイラでも理解していた
『..ううん。誰にも、何もされてない。ちょっと怖い夢見て泣いちゃったの』
リリア『..本当か?』
『ん』
リリア『そうかよ』