第87章 *懐刀インパクト*
今までの高圧的な態度から想像できないほど、深く腰を折って謝罪したセベクに、2人は驚きを隠せず目を丸くした
グリム『ふなっ?オメーが謝るなんて空から槍でも降ってきそうなんだゾ』
ユウ『ていうか、名前..まあいいか。これからもよろしくね...って言いたいところだけど』
セベク『え..な、なんだユウ』
笑顔のままズンズン近づかれ目の前で立ち止まったユウは、片手でしっかりとセベクの胸倉を掴み、もう片方の手の関節をパキパキと鳴らした
グリム『..オメー、歯ぁ食い縛っといたほうがいいんだゾ』
セベク『は?』
シルバー『!..まさか』
ユウ『闇を呼び出して僕らに迷惑かけた分は、さっきの謝罪で許してあげる。でもね、もう1つのことはその程度じゃ許されないよねぇ?』
セベク『もう1つ!?..はっ、ま、待て!そのことについては今からっ、』
ユウ『うるさい!それでも一発決めさせろ!!』
バキッ!!!
セベク『ぐはっ!!』
シルバー『セベク!?』
グリム『あーあ。イデアの時みてーないい音してんだゾ』
問答無用に殴り飛ばされたセベクの体が後方に崩れ落ちる。その威力は、普段から鍛錬を積んでいるセベクですら目の前に星がちらつき、一瞬気をやりそうになったほどだった
セベク『っ..』
ユウ『ほら、さっさと立ち上がりなよ。それであの子に跪いて泣いて謝罪して。自分がどれだけ酷いこと言ったか噛み締めながら』
シルバー『行く前に1つ言っておこう。闇に囚われたお前を誰よりも先に取り戻そうと動いたのも、最後にお前を引きずり出したのも、レイラだ』
セベク『...そうか』
殴られた箇所を腕で軽く拭いながら立ち上がると、決意の込めた瞳を輝かせながら、少し離れた岩の上で湖を眺める小さな背中へと向かっていった
シルバー『ユウ、ありがとう。あいつの背を押してくれて』
ユウ『別に押したわけじゃないです。あの子に暴言吐いたことがとにかく許せないだけなので』