第87章 *懐刀インパクト*
セベク『それは..きっと、そうだろうな』
シルバー『臣下の役目は、ただ王を肯定し従うことだけではない。時には諌めることも大切だ。お前も同じことを親父殿に教わったはず。違うか?』
セベク『...お前の言う通りだ、シルバー。僕はずっと迷っていた。若様に逆らってしまったことを。怒りと悲しみを込めて僕を睨んだ若様の瞳が..目に焼き付いて離れない』
脳裏にこびりついた炎を纏ったようなマレウスの瞳と表情に苦しげに顔を歪ませるも、振り払うように首を横に振り手をついて立ち上がった
セベク『まだ、迷いはある。若様の幸せを考えれば、このままでいる方が良いのかもしれないと..だが..僕は..僕の夢は!願いは!若様にとって誰より良き臣下となること!!この夢はここ(夢の中)では叶えられない。
僕が命をかけてお仕えしたいのも、尊敬しているのも、現実の若様ただお一人。ご両親がいらっしゃらない孤独に耐え、リリア様と共に歩み..ガーゴイルがお好きで、廃墟がお好きで、氷菓がお好きで..茨の谷の次期当主でありながらっ..民草と共に制服に身を包みっ、ナイトレイヴンカレッジに通っていらっしゃる..現実の若様っ。ただ、お一人なのだ..!!』
段々とその瞳に光るものが溢れ、思いをぶつけるようにその声にも上擦りが見え始める。悲痛な祈りのような言葉に、彼の想いの強さがひしひしと肌で感じられた
セベク『だからもう、夢に耽ることはしないっ!必ず現実の若様のもとへ馳せ参じてみせる!!僕はもう二度と迷わないぞっ..分かったか、シルバー!』
シルバー『..ふ、お前らしいな。その言葉、違えるなよ』
セベク『ふんっ!お前に言われずともっ!』
グリム『やれやれ、セベクのやつ。ようやく大声出す元気が出てきたみてーだな』
ユウ『相変わらずうるさいけどね』
そう言いつつも、セベクの調子が戻ってきたことに少し嬉しそうにしながら口元を緩める
セベク『情けないところを見せたな、
魔獣..いや、グリム。それからユウも。
迷惑をかけて、すまなかった』