第87章 *懐刀インパクト*
ウゥゥゥゥ...
目元を真っ赤に晴らし、どこか悲しげに笑うレイラに、魔獣は唸りを小さくして暴れなくなった
『ん、ありがと。今降ろすね』
そっと魔獣を降ろし闇の手を消すと、こちらを振り返ることなく魔獣は駆けて行った
『ふぅ...え、わわっ!』
ユウ『レイラっ!勝手に走っていっちゃ駄目でしょ!?どれだけ心配したと思ってるの?君に何かあったらって考えて..もう..』
グリム『あとオメー、足速ぇんだゾ。すぐ追いかけたってのに、あっという間に見失っちまった』
飛びつくように抱きしめられ、少し苦しさを感じる強さで腕が締め付ける。その腕が震えていることに気づき、申し訳無さが募っていく
『..ごめん』
ユウ『..僕こそごめんね。彼のこと殴ってでも黙らせれば良かったのに..こんなにも泣かせちゃったね』
指で目元を拭われ、僅かに残った雫がはらりと落ちていく。赤く腫れた部分に優しく口づけ、あやすように唇にも口づけて微笑むと、レイラの頬がほんのり染まり、肩口に顔をポスっと埋められた
ユウ『やだったね..怖かったね。でも一人で離れちゃだめだよ』
『ん..グリムもごめん』
グリム『まったく。オメーはやっぱ、オレ様が着いてやらねーとだめなんだゾ。さ、早いとこ戻って寝よーぜ。オレ様ヘトヘトなんだゾ』
『戻るの、や..』
ユウ『先輩も心配してるし、セベクくんも少しは頭冷やしてる頃じゃないかな?まあ、冷えてなかったら物理的に冷やしてやるけど』
グリム『え、何する気なんだゾ?』
ユウ『頭掴んですぐそこの湖に沈めてやる』
『ユウ、いじわるしちゃダメ。雷さん可哀想だから、やっぱり戻る』
ユウ『優しいね』
『別に許してないから、優しくない。それに、いっぱい泣いたら眠くなってきた』
グリム『泣き疲れて眠いなんて、ほんと子供みてーだな』
『むぅ..』
ユウ『よしよし、そうだよね。疲れちゃったよね。早く戻って寝ようか』
『ん』
体を離してしっかりと手を繋ぎ、3人は来た道を戻っていった。白み始めた空にはまだ僅かに星が瞬き、レイラは瞳に焼き付けるように見つめながらユウの手を強く握った