第87章 *懐刀インパクト*
セベク『..それが何だと言うのだ!』
シルバー『彼女は優しく、誰よりも他者を想い、何よりも強い人間だ。それを何故傷つける?』
セベク『僕は..ただ..』
シルバー『彼女は強い..だが繊細で儚い。俺達はそんな彼女を守ってやらないといけないんだ』
胸倉を掴む手が少し緩み、シルバーの表情も段々と落ち着きを取り戻し始める
一方のセベクも、最初見せていた抵抗がなくなり、複雑な感情で揺れ動く瞳は地へと落とされていた
セベク『..リリア様から託されたから、そう思っているだけだろう』
シルバー『!!それは..』
違うと言いたいはずなのの何故か反論できず、2人は互いに黙ったまま、夜風だけが冷たく吹き抜けた
茨の国・森の中
『ぅっ..ぅぅっ..ぐすっ..』
静寂の森に広がる悲痛な泣き声と、拭っても拭っても零れ落ちる雫を疎ましそうにしながら、目的もなくただ真っ直ぐ歩く
早く泣き止まないといけないと必死で抑えようとするが、気持ちに反して悲しみの感情の波がうねり続けていた
『分かってるもん..分かってるのに..っ..』
自覚しているからこそ面と向かって放たれた言葉が容赦なく体を突き抜ける。段々と歩みの速度が遅くなり、目の前に現れた一際大きな大木に背を預け、ズルズルとその場で座り込んだ
『うっ..ひっく..ぅぇぇ..っ..』
膝に顔を埋め泣き続ける。このまま小さくなって消えてしまえばとも思うほど、精神状態はフラフラしていた
『(違う..雷さんは間違ったこと言ってない。全部合ってるの。でも、だから凄くやだった)』
全く違う相手だというのに、あの時自分を責めたセベクが一瞬だけ実の親を彷彿とさせ、それが余計に恐怖心と嫌悪感を助長させたのだ
暗い気持ちで沈んでいきそうになりながら、ふと脳裏に浮かんだ実の親が、ヒステリックに自分を罵る姿が走り去る前の自分と重なり、自嘲の笑みを浮かべて体の力を抜いた
『..私も、あの人たちと同じなんだ..』
ユウ『レイラ〜〜っ!!』
『ユウ..?』