第87章 *懐刀インパクト*
『『『(ビクッ!!)』』』
普段あまり叫ばないレイラの聞いたこともないほど大きな叫びと、彼女の周りから一瞬弾けた魔力の雷に、4人の全身がビリっとした衝撃が走る
『..なの、そんなの私が一番良く知ってる!私は誰かに甘えて縋らないと一人じゃ何もできない。魔法の扱いだって全然上手くないし、この中じゃ一番弱い。役立たずの足手まといで、みんなに迷惑をかけてるのも知ってる!
でも、黒兎だってことにっ..いい気分になったことなんて..っ、一回も、ない!』
大粒の涙がまるで雨のように地に落とされ、上擦る涙声がたどたどしく言葉を紡ぐ。突き刺さった言葉が息苦しさすら感じさせ、耐えるように胸の上をぐっと掴んだ
『っ..もう、うるさいのも、ホントの事言われるのも、や..雷さんなんて..嫌いっ!!』
セベク『!!』
吐き捨てるように叫ぶと、背を向けて少し先の森へ向かって走り出してしまった
『『レイラっ!!』』
グリム『ふなっ!あいつ、森に走ってっちまったんだぞ!』
ユウ『僕が追います!待って、レイラっ!』
グリム『オ、オレ様も行くんだゾ!』
2人がすぐさま後を追いかけ森に入っていくと、気まずく重い空気がシルバーとセベクの間に流れた
セベク『ふ、ふん!本当のことを言われて泣いて逃げ出すなど、やはり弱いやつだ..っ!?』
言い終わる前に胸ぐらを掴まれ、シルバーと目線を合わせられる。その銀の瞳は怒りと悲しみに満ちて、普段優しく丸みを帯びた目も、鋭さだけで人を殺せそうなほどに吊り上がっていた
シルバー『いい加減にしろ!!お前、自分が何を言ったのか分かっているのか!?』
セベク『わ、分かっているとも!やつの短所をハッキリと言ってやっただけだ!』
シルバー『違う!あれはお前が彼女を気に入らないからと、私怨で振りまいたただの暴言だ!
お前も見ていただろう!自分も戦いながら近衛兵の方の危機を助けたことも、凶暴な魔獣に対して力を示しつつ、傷つけずに逃がしたのを』