第87章 *懐刀インパクト*
上から流れる水が小さな滝のようになっており、その流水音と森の奥から聞こえる鳥の声、そして優しく吹く心地よい風に髪を遊ばせながら、目を閉じて自然の音に耳を澄ませる
サァァァァ..
チュン、チチチ..
『〜♪気持ちいい』
昨晩からの耳をつんざく痛みを癒やすように、静寂な森に流れる自然の音に耳を傾ける
『んふふ〜〜♪』
小さく鼻歌を歌いながら、足をぶらぶらさせていると、ふと森の奥からパタパタと1羽の青い小鳥が近寄ってきた
『わ、鳥さんだ。おはよう』
チュンチュン..
岩の上に降り立った小鳥はあるものを咥えており、それをレイラへとズイッと差し出した
『ん?これ、くれるの?』
差し出しされたもの受け取る。それは果実がついた長い茎で、先の方に赤くツヤツヤとした熟れた実が2つ付いていた
『これ..もしかして木苺?いいの?』
チュンチチチっ!
召し上がれと言うようにクルクルとレイラの周りを飛び回ると、受け取ってもらったのが嬉しかったのか、上機嫌に舞い上がり再び森へと帰っていった
『ありがと、鳥さん』
小鳥の飛んでいった方を見つめ嬉しそうに笑うと、早速茎から木苺を1つもぎ取り、太陽にかざしてその輝きに目を細めた
『綺麗..』
少し食べるのが勿体ないなと思い始めたその時、背後から小さな足音と感じたことのある魔力を感じ取り、パッと振り返るとそこには少し驚いた様子のリリアが立っていた
『リィ、さん?』
リリア『..足音は消したと思ったのにな。流石は兎の獣人、耳がよく効くことで』
こっそり近づいていたらしく、まさかバレるとは思っていなかったのか、肩をすくめて許可も取らずにレイラの横にどかっと腰掛けた
『おはよ、早いね』
リリア『それはお前もだろ。つか、寝なくていいのかよ。今日もまた夜通しで歩き回るぜ』
途中で力尽きても知らねぇぞと意地悪く笑うリリアに、レイラはキョトンとした顔で首を傾げた