第87章 *懐刀インパクト*
リリア『そいつは失礼。これでもだいぶ真綿に包んだつもりだったんだが。だいたいなぁ、こっちは物心ついて以来300年も、あのお姫様に振り回されてるんだぜ。マレノア様が、城の中で大人しく白竜に乗った王子様を待っているような姫なら..俺はこれほど苦労しなくて済んだろうよ』
今頃城内で待ち構えているマレノア姫を想像し、リリアの顔がげっそりとし始める
バウル『右大将殿っ!!』
リリア『ま..あと2.3年は野ばら城で大人しくしていてくれそうなことだけが救いだな。さすがの姫も、大事な卵が孵るまでは無茶しねーだろ』
『『卵っ!!??』』
リリア『なんだ?急に大声出しやがって..』
シルバー『マ、マレノア姫にはすでにお世継ぎが!?』
セベク『わ、わ、若..いや、卵様は今どこに!?ご両親と共に野ばら城にいらっしゃるのですか!?』
『卵様って..』
ユウ『まあ、この時代で"若様"は言えないだろうけどさ。てか、ツノ太郎って卵から生まれたんだ』
バウル『貴様ら、なぜお世継ぎの卵がどこにあるかなど気にする?怪しい..よもや、卵を狙っているのではあるまいな!?』
シルバー『あ、ありえません!我々は、その、お世継ぎが誕生されていたことさえ知らなかったので..!』
リリア『はぁ..卵の在り処なんか、この国じゃその辺を歩いてるガキだって知ってるだろ。ドラゴンの卵は、親から愛情と魔力を注がれなければ孵らない。その上、この国で一番安全な場所といえば、マレノア様の腕の中以外ねぇ。知ったところで、どうも出来やしねぇよ』
バウル『しかし!竜眼公の件もございます。よそ者は信用なりません!用心するに越したことはない』
リリア『竜眼公レヴァーン、か..あいつが無事に戻って来てりゃ、俺たちが東の砦くんだりまでお使いに行くこともなかったんだけどな。あの夫婦は、子供の頃から俺に余計な仕事ばっかり増やしやがる』
バウル『それは..』
リリア『ふぁ〜あ..空が白んできやがった。俺はそろそろ寝るぜ。火は絶やすなよ。この辺りは"銀の梟"だけでなく、獰猛な魔獣も出るからな。お前らもさっさと寝ろ。正午には東へ向けて発つ』
バウル『..はっ。ゆっくりお休みください。
ーーー夜の祝福あれ』
リリア『夜の祝福あれ』