第87章 *懐刀インパクト*
シルバー『野ばら城?竜の都にある王城、"黒鱗城"ではなく?』
リリア『茨の国の南に広がる湿地、翠が原。その中央で、珊瑚の海や風鳴き渓谷の向こうからやってくる不届き者に睨みを効かせている城塞..それが野ばら城だ。マレノア様は、我ら近衛隊を指揮するこの国の守りの要でもある』
バウル『我ら王宮近衛隊は、マレノア様から"銀の梟"への要求書を届ける使節団として今日、野ばら城から出立したところだ』
セベク『要求書というと..』
バウル『決まっているだろう!!我らの国での"銀の梟"による無礼な振る舞いを即刻やめよとの最後通牒だ!』
リリア『はぁ..魔法で飛べば、すぐに奴らの砦までたどり着けるんだがな』
シルバー『飛行術を使わないことに何か理由が?』
リリア『俺たち以前に書状を持って東の砦へ向かった施設団が、次々行方不明になっている』
『『えっ..』』
『..さっきの人達と会って、もしかしたら..』
セベク『貴様っ、何を縁起でもないことをっ!!』
リリア『いや、その可能性も十分にある。俺たちの仕事は書状を届けること。次に目的地までの道すがら、行方不明者を捜索すること。そして..妖精に無断で採掘行為をする"銀の梟"を見つけて駆逐する事ってわけだ』
バウル『くっ..外交は本来貴族連中の仕事。なぜ右大将殿が押し付けられねばならないのです!』
リリア『妖精は人間に比べて数が少ないからな。"銀の梟"が現れてから常に労力不足だ。それに、貴族連中は鉄の匂いを嗅いだだけで卒倒しちまいそうな頼りにならん奴らばっかりときた。マレノア様もその辺を考えて俺を選んだんだろうさ』
バウル『それは..』
言い淀むバウルを横目に、空いたテーブルの上にバサッと地図を開いて順に指で経路をなぞる
リリア『俺たちはこれから、この闇夜の森を抜けて翠が原を通り、風鳴き渓谷へ向かう。風鳴き渓谷を抜けたら..紅が原と竜尾岳で行方不明者の捜索を行いつつ、大陸の東端にある"銀の梟"の砦を目指すことになる』
シルバー『..長旅になりそうですね』