第87章 *懐刀インパクト*
セベク『妖精は種族によって言語も発生方法もまるで違うが、声に魔力を込めることで意思疎通ができる。現代では茨の谷でも共通語で話す者が多く、妖精語を使うものは限られているが..妖精語は誇り高く伝統ある言葉だからな。僕は昔、祖父や母に習って覚えたのだ』
シルバー『俺も親父殿に習おうとしたことがあるが..俺の耳では、言語として聞き取ることすらできなかった』
セベク『僕の父も同じことを言っていた。そもそも人間の耳は、他の動物に比べても可聴域が狭い。僕は妖精の血を引いているからな。貴様らが聞こえない繊細な音も聞こえるというわけだ。どうだ、すごいだろう!!!』
グリム『なら、なんでオメーはそんな声がデケーんだゾ..繊細な音も聞こえるんなら、レイラの耳のことも考えろよぉ』
『...』
『『はぁ..』』
耳を押さえながら苛立ちの表情で一番後方を歩くレイラを横目に、ユウとシルバーは何度も見た光景にため息をつくしかなかった
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バウル『右大将殿。物見の"草"より伝達が』
リリア『この先に"鉄の者"あり、だろ?もう鉄と油の匂いがプンプンしてやがる』
バウル『右大将殿が出るまでもありません。私が露払いを』
リリア『それもいいが..おい人間ども』
シルバー『はい』
リリア『早速だが、ナイトレイヴンカレッジの魔法士の実力とやらを見せてもらおうか』
バウル『なっ!?』
リリア『この先に"鉄の者"がうろついてる。お前たちだけで捕らえてみせろ』
『私達、が?』
リリア『そうだ。一匹も逃がすなよ。野営地への奇襲が台無しになるからな』
『『はっ!!』』
リリアからの命令に力強く応えた二人を筆頭に、レイラたちは一団を離れ、前線へと駆け出していった
バウル『人間どもに任せるなど、一体何をお考えに..』
リリア『まあ見てろ。ただ使い物になるかどうかの品定めだ。それに..(あの黒兎の女..)』