第87章 *懐刀インパクト*
リリア『俺も驚いたぜ。まさかこんな辺境の森の中で、あの"黒兎サマ"にお会いできるなんてな』
信じられないものを見たように目を見開くバウルの横で、リリアは疑いと好奇心も瞳で真っ直ぐに見下ろす
バウル『く、黒兎など!ここにいることが"銀の梟"どもに知られでもしたら、間違いなく奴らはこの者を奪いに来る!一刻も早くこの森から、いや..この国から追い出しましょう!』
『『!!!』』
ユウ『ちょ、ちょっと待ってください!追い出すって..なんでそんなことを!』
バウル『黙れ人間!黒兎はこの世界でも稀有な存在であり、マレフィシア様やマレノア様には劣るも、強力な魔法を扱う存在だ。おまけに他者を意のままに操ることもできると聞く。そんな黒兎が奴らの手に渡ろうものなら..っ!』
リリア『まあ、負ける気は毛頭ねぇが、茨の国に危害が及んで苦戦を強いられる可能性はある。その前にここで死んでもらうか、奴らに見つからないうちにこの森からとっとと出ていってもらうかしねぇとな?』
シルバー『っ..』
レイラに向けられる鋭い視線から守るように、シルバーは咄嗟に前へと庇うように進み出る
リリア『..だがまあ、約束は約束だからな。腕に覚えがあるというのも、嘘ではないようだし。
いいだろう。約束通りお前たちの同行を許す』
バウル『う、右大将殿っ!?』
リリア『俺たち妖精に二言はねぇ。そうだな、バウル?ーー"夜の祝福あれ"』
バウル『.."夜の祝福あれ"』
リリア『ナイトレイブンカレッジの使者なら、俺の名はもう知っているだろうが..俺は名をリリア、字をヴァンルージュ。国から押し付けられた面倒な肩書はあるが..お前らは俺の部下じゃねぇ』
好きに呼べと言い放つリリアの隣で高らかにリリアの凄さを語るバウルは、どこかセベクを彷彿とさせるような口調を思わせる
バウル『本来、貴様らのような者など拝謁も叶わぬお方なのだ!頭を垂れよ!』
『『はっ!』』
バウル『おい、そこのお前たちも頭を垂れよ!』
『や』
ユウ『お断りしまーす』
バウル『な、なんだと貴様ら!!』
『ぅぅ..おっきな声、ゃ..』
リリア『やめろバウル。ったく、ギャンギャン騒ぎやがって。黒兎サマの怒りに触れようもんなら、お前が消し炭にされんぞ』