第86章 *救出プロセス*
リリア『ん?無事に卒業試験を突破できれば帰郷するつもりだが..なぜそんなことを聞く?茨の谷は、わしらの故郷。お主と暮らしたあの森の家こそ、わしの終生の住処よ』
シルバー『...』
リリア『どうした、シルバー?顔が真っ青だぞ。まるで悪い夢を見ているような顔じゃ。無理をせず、部屋に戻って休め』
優しいリリアの言葉にシルバーはグッと拳を握り、普段の穏やかな瞳を鋭くしてリリアを真っ直ぐに見つめた
シルバー『っ..その通りです、リリア先輩。これは..全部、悪い夢だ。俺たちを眠りの中に引き留めようとする、都合の良い夢』
『『『え..?』』』
『ゆ、め..?ぁぅ..ぅぐ..っ!』
突然レイラの頭に揺さぶられるような感覚が襲う。シルバーの言葉に反応して、何かが内側から強く自分を叩きながら、大切なことを思い出させようとしているようだった
ふらつくレイラに気づき、マレウスは片腕で抱き寄せると僅かに瞳を細めながらシルバーを見据えた
セベク『おいシルバー、趣味の悪い冗談はよせ。祝いの席だぞ!』
シルバー『冗談なら、どれだけ良かったか..!』
セベク『は?何を言ってる。まだ寝ぼけているのか、貴様!?』
シルバー『思い出せ、セベク。お前が眠りに落ちる前のことを!』
セベク『眠りに落ちる..前?』
シルバー『リリア先輩は魔力が尽き、学外研修を前に学園を中退し..赤龍の国に移住する予定だった。学園のみんなを招いた送別会の夜..マレウス様がご乱心なされて..お止めしたが、力を及ばず..あの場にいた者は全員眠らされている』
セベク『な..な.. 何を言っている!?若様がご乱心だと!?若様は常に冷静沈着でいらっしゃる。そんなことあるわけがないだろう!』
理解できないとセベクが声を荒げているその傍らで、今まで黙っていたマレウスが口を開いた。それは静かに、しかし冷たく畏怖を感じさせるものだった
マレウス『シルバー。お前は本当に良くない夢を見ていたようだ。今日はもう下がれ。今ならお前の無礼を許そう』
リリア『マレウスの言う通りじゃ。何より、わしがお主を置いて遠くに行くわけがない。何も心配はいらぬ。お主が学園を卒業したら、またあの森の家で共に暮らそう。ずっと一緒に..な』