第86章 *救出プロセス*
『あれ..そうだっけ?』
確かに彼らとずっと一緒にいたいと常日頃からは思っていた。だが、それが叶わないということもレイラは分かっていた。だというのに今目の前に広がる光景は、生活は、まさに自分の願いそのものだった
『..そう、だったかも』
ふわふわとゆっくり、それが夢ではないというようにレイラの脳内に"目の前の世界が現実"だと刷り込まれていく。自分が引きずり込んだ夢に順調に侵食されていく姿に、マレウスは静かに口の端を上げた
ユウ『じゃあ、僕とグリムはお買い物に行ってくるね。ツノ太郎、レイラのこと頼んだよ』
マレウス『ああ。レイラのことは僕がしっかり守ってやろう』
グリム『レイラ、勝手に一人でどっかに行くんじゃねーんだゾ。おめーこの前も一人で外出て、怪しいやつに声かけられてたんだからな』
『ん?..ん、分かった』
ユウ『じゃあ行ってきます』
手を振りながら姿見ではなく玄関の扉を開けて出ていったユウたちを見送ると、残されたレイラは隣に立つマレウスの手をそっと握った
マレウス『どうした?ユウ達がいなくなって寂しくなったか?』
『ん。でも大丈夫。ツノ太郎が一緒にいてくれるから。でもツノ太郎は今日お出かけしないの?』
マレウス『ああ。今、茨の谷は落ち着いているからな。僕の役目はお前をここで守ることだ』
『そっか。ありがと、一緒にいてくれて』
マレウス『みな、お前の願いを叶えるためにここで共に過ごすことを望んだんだ。どうだ、お前の願いそのものだろう?嬉しいか?』
『ん』
小さく頷くとマレウスはそっとレイラの頬に手を添えると、優しく額に口づける
マレウス『僕はこの生活が永遠に続くように願っている。僕の願いも、お前の願いも全て叶えてやろう。だから、このまま僕とずっとここにいると誓ってくれ』
『ツノた..っ..ぅぅ』
突然頭にズキッとした痛みが走る。余りの痛みに頭を抱えると、大きな手がその上から包み込むように触れる
マレウス『ああ、可哀想に。"目覚め"に苦しまないよう、もっと深く堕としておこう
..安心しろ。お前の望む世界はここにある』