第85章 *送別スタート!*
マレウスの宝石がブロットに染まると同時に、談話室の壁や床に無数の茨のツルが張り巡らされていった
それはディアソムニア全体を包むだけでなく、鏡を通り越してナイトレイブンカレッジ、そして賢者の島全体にまで根を張った
談話室では、全員の頭上を光が粒を撒きながら飛び回り、その粒がかかると生徒や教師たちは次々と誘われるかのように目を閉じると、深い眠りにつき始めた
緑色のフィルターを貼ったかのように染まった空間で、マレウスは一人高らかに笑うと、自身の体をブロットに染め上げていった
仄暗い肌を紫の挿し色が入った黒のマントに身を包み、右目に淀んだ緑の炎を灯し、漆黒の角には瞳の炎と同じ色の線が走る
マレウス『大丈夫..恐れることなど何もない。眠りに身を委ねれば、1000年など瞬きのうちだ』
『っ..はぁっ..』
マレウス『ん?ああ..やはりお前はすぐに眠りにつかないとは思っていた。その身に巣食う魔なる者が邪魔をするからな』
誰もが眠りにつく中、一人動く姿を見つけると、そっと口角を上げながら近づいていく
"祝福"の直前、ノアが内側から力を働きかけたおかげで、何とか意識を繋ぐことに成功したのだ。だが、眠りの影響は凄まじく、内側のノアすら侵食し始めていた為、いつ気を失ってもおかしくない状況で、ふらつく足をその場で踏ん張り、壁に縋り付くようにしなければ立っていられなかった
[ウサギ、ちゃ..はや、ク、そとニ..]
『はぁっ、はぁっ..』
マレウス『ふふ、どこへ行くつもりだ?』
『っ、ツノ、た、ろ..』
トントンと倒れた生徒の上を器用に跨ぎながらあっという間に目の前まで来たマレウスは、今にも瞼を落としそうなレイラに笑みを深めた
[だめダ..この子のいしき、ヲ..奪え、なイ]
『..こんなの、ダメ、だよ..みんなを、もとに、戻、して』
マレウス『そう怯えるな、お前もすぐに..ふっ、僕と戦う気か?』
足を踏み出すマレウスへとペンを差し向ける。だが持つ力は弱く、恐怖と眠りに耐える疲労で手が震え、今にもペンを落としてしまいそうだった