第85章 *送別スタート!*
弱々しい姿に憐れみと愛おしさの混じる笑みでその手を掴むと、壁に押し付け顔をぐっと近づけた
『っ..』
マレウス『安心しろ、これはお前のためでもある。お前の望みの"大好きな人達とずっと一緒にいたい"。それを僕の願いと共に叶えてやる』
ドロリと欲望の色を乗せた淀んだ瞳が弓なりに弧を描き、コツンと額が合わさる。穏やかな狂気を前に、這い上がる恐怖と自分のせいで彼がこんなにも変わってしまったのかと後悔が襲い、深紅の瞳からポロリと一筋の涙を流れた
『っ..ぅっ..つの、たろ..』
マレウス『ふっ、泣くほど嬉しいか。大丈夫、お前はただ僕に身を委ねていればいい。誰も失わない、ずっと共に過ごせるんだ..さあ、もう眠るがいい。愛おしい、僕の黒兎』
顔を離し額に口付けられると、一気に引きずり込まれるような眠気に襲われ、レイラの意識が黒く堕ちていく
霞む視界で最後に見たのは、満足そうに笑うマレウスの笑顔だった
力をなくし崩れるレイラの体を受け止めると、横抱きにして持ち上げ、腕の中でスヤスヤと眠るあどけない寝顔に目を細めた
マレウス『ああ、お前は本当に美しい。やっと、やっと手に入れたぞ。どうか、永遠に僕の側で...ふふ、ふははは』
大切な宝物のように強く抱きしめると、上機嫌な足取りで談話室の真ん中に立ち、満たされたような笑みで天を見上げた
静寂包まれた談話室には、深く揺らすような悲しい鼻歌が響き渡った
"お前たちは..御伽話の主人公になる "