第85章 *送別スタート!*
ーオンボロ寮・談話室ー
リリア『これがわしとアデルの出会い。あの後、あやつの警戒心を解くのにひたすら頑張って説得し、一晩話し合ってようやく杖を下ろしてくれた。それから茨の谷へ向かっていると言うもんじゃから、それならばと共に向かっていた道中、色んな話をした』
『どんな?』
リリア『あやつが今まで黒兎としてどんな誹謗中傷や恨み、悪意を受けたか。様々な理不尽に心を痛めながらも旅を続けている理由など。
暫く共に旅をしていると、突然魔法を教わりたいと強請り始めてな。最初は断ったんだが、助けた礼にということでいくつか指導をしてやった』
懐かしそうに目を細め、かつての日々を思い出すリリアの口元には優しい笑みが浮かんでいた
『楽しかった?』
リリア『そうじゃな。戦いばかりだった日々の、僅かな安らぎの時間じゃった。
だが谷につく直前、茨の谷を攻めようとしてきた人間の軍勢が、わしらに気づいてな。アデルが黒兎だと分かった途端に血相を変えて一斉に襲ってきた。なんとか抵抗して、谷の者にも増員を要請したことで優勢ではあったんだが、自分のせいで茨の谷の者に迷惑をかけたと思ったのか、アデルは自分を囮にして一人谷を離れるように去っていった』
『その、後は?』
リリア『連絡手段もなかった上に、いくら探しても見つからず..わしはてっきり捕まってしまったのではないかと、あやつを追いかけなかった事に酷く後悔した。しかし、あやつは生きていてくれた。安全な場所で平穏な生活を送っていると返事が来て..本当に嬉しかった』
『おばあちゃんね、リィさんのこと大好きだって言ってた。大切な人だって。それと、すごく心配もしてたんだよ』
リリア『..そうか。あやつが無事だったなら良かった。わしの心残りが一つ減って嬉しい限りじゃ。さて、わしが知っている黒兎について、もう少し話すとするかのう』
『ん』