第85章 *送別スタート!*
アデライト『これでまだマシでしょ。治療魔法をもっと上手く扱えたら良かったんだけど』
?『..う..』
アデライト『!!..起きた?』
?『..っと、いかんいかん。つい眠りこけてしまった..ん、おぬし..』
アデライト『寝てたって..あんた、怪我してたんだよ。それで気絶してただけ』
むくりと体を起こしたその人物は腕に巻かれた包帯に気づくと、思い出したようにポンと手を叩いた
?『おう、そうだったそうだった!ちょいとヘマをしてケガしてしまってな。一休みしたら動こうと思ったらそのまま爆睡してしまった。おぬしが手当をしてくれたのか?ありがとう』
アデライト『いや、別にいいんだけど。何したらそんな怪我するのよ』
?『そこは気にするな。それより、おぬしは命の恩人じゃ。なにかわしに出来ることがあれば叶えよう』
アデライト『命って大袈裟な..いや、別にいいよ』
?『そうはいかん。礼を欠いたとあってはわしの故郷に泥を塗ってしまう』
アデライト『いや、ほんとに大丈...わっ』
突然強い風が吹き、被っていたフードがふわりと後ろへと吹き倒した。その瞬間、怪我をした人物の眼前に長い黒髪と兎の耳、血を垂らしたような深紅の瞳が映った
アデライト『(っ、やばっ!)』
?『!!おぬし..まさか、黒兎なのか?』
アデライト『っ!!』
黒兎を知っていると分かると、アデライトはすぐに懐から杖を出してその人物へと向けた
?『待て待て!おぬしと戦う気はないぞ。黒兎のことは知っておるが、だからといって敵意も悪意もない。だからその杖を下ろしてくれんか?』
アデライト『嘘をつかないで。どうせあんたも私を利用したいだけでしょ。今までそうやって何もしないなんて言ってきたやつは、みんなその後手のひら返して襲ってきたんだから』
?『...辛い目にあってきたんじゃな。安心せい、わしはおぬしを決して傷つけはしない。信用できないなら杖は向けたままでもいい、だから少しわしの話を聞いてくれ』
アデライト『...』
?『まずは自己紹介せんとな。わしはリリア..リリア・ヴァンルージュ。茨の谷に住まう妖精じゃ。おぬしの名も聞かせてくれんか?』
アデライト『..アデライト。アデライト・ルーファス』