第85章 *送別スタート!*
パタンと扉が閉まり、談話室には暫くレイラのすすり泣く声だけが響いていた。泣かせてしまったことに罪悪感を抱きつつも、リリアは頭を撫でながら耳に口を寄せて囁きながら話を続ける
リリア『黒兎の末裔...いや、レイラよ。今からわしが知っていることを全て話そう。黒兎のことについて』
『ぐすっ..ぐす..ん..』
リリア『以前、手紙を預けたことがあったじゃろ?』
『おば、ちゃんの..お友達が、リィさんに預けた、あれ?』
リリア『そう。アデルに会いたいという知り合いがわしを介して手紙を送ったと..あれの知り合いというのはわし自身じゃ』
『えと、リィさんがおばあちゃんに会いたかった、の?
..そっか、リィさんは700歳だからおばあちゃんと昔会ってても、変じゃ、ないもんね』
リリア『うむ。わしがアデルと出会ったのは、あやつがまだ17の頃じゃった。黒兎としての宿命を理解して、それでも外に出て世界を見て回りたいと旅をしておったらしい。その時はまだ世界は戦争、程ではないが未だに争いが絶えず、今よりももっと危険な時代じゃった』
ー数十年前ー
アデライト『..次の国はもう少し平和でいてほしいんだけど。前の国は酷かったなぁ..私が黒兎だって分かった瞬間に国を総動員させて捕まえに来るなんて』
ため息をつきながらまとったローブを風にたなびかせながら、辺りを警戒して山道を進む。散々追いかけ回されたせいか、アデライトの表情には疲れが滲み出ていた。その疲れを振り払うように首を振ると、吹き抜ける風に耐えるように、フードをグッと深く被りながら歩みを進める
アデライト『とにかく急いで次の国境に行こう。そうすればあの国の連中も追ってこれないでしょ
...ん?なにあれ、倒れて..ひ、人!?』
細い山道の先に大木を背に座り込む人影を見つけ、一気に警戒心を強めるも、ピクリとも動かない様子に急いで駆け寄る
アデライト『死んで..ない、か。寝てるだけ?よく見たらちょこちょこ怪我してるじゃん』
見ず知らずとはいえこのまま放置すれば間違いなく山の獣たちの餌になることは明白。アデライトは仕方なく背負っていたリュックを下ろすと手を突っ込み、救急道具を取り出して目の前の謎の人物の治療を始めた