第84章 *ディアソムニア寮編〜深淵の支配者〜悶々アウェイク*
静かな夜の静寂が部屋を包む。少し冷たい空気が頬を撫で肌が冷える
先程までエースの腕の中で眠っていたレイラだったが、ふと目が覚めてしまい、こっそりと腕から抜け出して起き上がる
『あれ..ユウ、いない?』
上のベッドで眠っているはずのユウの姿がない事に気が付き首を傾げていると、ふわりと部屋の窓から緑色の光の粒がいくつも浮かんでいるのが見えた
『あれって、ツノ太郎の..ぁ、ユウも、いる』
立ち上がり窓から下を見下ろし、マレウスらしき後ろ姿とユウの横顔を見つけると、足音を立てずに部屋を抜け出した
マレウス『そうか、お前もこの場所を去るのだな。本当に、何もかもが瞬きの間だ』
伏せられた瞼を長い睫毛が影を作り切なげに揺れる。元の世界に帰れるかもしれないというユウの言葉に、悲しげな呟きが夜の闇に溶ける
ユウ『でもみんなとお別れすることを考えると、寂しいよ』
マレウス『寂しい、か』
『ツノ太郎、ユウ』
『『!!』』
突然聞こえてきた背後からの声に振り向くと、こちらを伺うように玄関のドアからちらりと顔を覗かせるレイラの姿を見つけた
ユウ『レイラ!?起きちゃったの?』
『なんか目が覚めて..そしたらユウがいなかったから』
ユウ『ごめんね。眠れなくて起きてたらツノ太郎の魔法が見えたから、少しここでお話してたんだ』
『そっか。こんばんは、ツノ太郎』
マレウス『ああ。それにしても、その薄着で寒くはないのか?特にお前のような細身はすぐに風邪を引きそうだ』
『ん〜ちょっと寒いかも』
ユウ『じゃあ早くお部屋に戻ったほうがいいね。僕も戻るから、一緒に帰ろ?』
マレウス『いや、少しレイラと話がしたい。悪いがお前だけ先に戻っていてくれないか』
ユウ『?いい、けど』
マレウス『なに、長くはかからない。ではレイラ、その間僕の制服を着ていろ』
そっと肩をかけられた大きなブレザーが小さな体を包む。袖を通すと優しい温もりが冷えた体に染み渡る
『んふふ、あったかい』
ユウ『じゃあ僕は行くけど、余り長居せずに戻っておいで』
『ん』