第84章 *ディアソムニア寮編〜深淵の支配者〜悶々アウェイク*
ユウ『うわ、うるさっ!』
『ぅ..っ、おっきな声.. ぅっ、ぅぅ〜〜..ぅぇ..っ』
マレウスへ抱きつきに行ったため至近距離の轟音を浴び、レイラはその場で足が止まり体を震わせ、ジワジワとその瞳に雫が溜まっていく。その瞬間、ユウの瞳から光が消えセベクを睨むと、ツカツカと大股で近づいていく
セベク『な、なんだ貴さ、ぐっ!』
ユウ『ねえ、いきなり大声で怒鳴るなんて、そっちの方が無礼じゃない?しかもこの子の耳を見て分かんない?獣人は他の人よりも聴力が良いんだよ。しかも兎の獣人なら尚更って、僕でも分かる。
つまり何が言いたいかっていうと..黙っててくれないかな?』
胸倉を掴み抑揚のない声がヒヤリとした冷たさをまとう。余りの迫力にセベクの背中に恐怖にも似た感覚が走る
セベク『!!な、貴様..っ』
マレウス『ユウ、それくらいにしてやってくれ』
ユウ『...』
マレウス『部下の無礼を詫びる。後でよく言っておくから、今は僕に免じて抑えてくれないか』
ユウ『..はぁ..分かったよ』
切なげなライムグリーンにこれ以上怒るわけにもいかず、不本意ながらも手を離してグリムの元へと戻っていった
マレウス『レイラ、お前にも心から詫びよう。どうか許してほしい』
そう言ってそっと開かれた腕に、レイラは涙を流しながら歩いて近寄ると、ポスっとその胸に擦り寄った
『ふっ、ぐすっ..ひっく..ぅぅ』
マレウス『怖がらせて悪かった』
セベク『なっ..おい!若様の制服に涙を擦り付けるな!』
マレウス『セベク』
セベク『!!』
マレウス『レイラをこれ以上泣かせるな。次は..分かっているな』
細まる瞳孔が圧倒的な王の威圧を放ち、ユウ以上の恐怖を感じたセベクは"はっ!"と数歩下がり頭を下げた
『ぐすっ..ツノたろ』
マレウス『落ち着いたか』
『ん、ごめんね』
グリム『つかこいつ、確か文化祭の時コロシアムにいたうるせーやつじゃねぇか』
ユウ『ああ、確か馬術部の..なんだっけ、セベク・ジグボルトくん?』
セベク『いかにも!若様の忠実な臣下、セベク・ジグボルトだ!』