第83章 *閑話カームデイ12 〜クルーウェル・一部クロウリー〜*
クルーウェル『誰でもいいだろ..はぁ』
カクテルに一口飲んでため息をつくと、カウンター越しのサムは目を細めてウイスキーに口をつける
サム『それにしても珍しいね。キミがそんな可愛いテイストの度数の低いカクテルを頼むなんて』
クルーウェル『明日も仕事だからな。それに..』
サム『その小鬼ちゃんに見えるからかい?』
クルーウェル『...』
無言でもう一口飲むと、グラスを優しく撫でる。その手付きはまるで、脳裏に浮かぶ愛らしい兎に触れる時のようだった
サム『随分とお熱だね。普段のキミならもっと我が道を行くようにグイグイと攻めて、既に自分のものにしていそうだけど。やっぱり、流石に生徒相手には慎重になるか。それとも、相手から好かれているか不安なのかな?』
クルーウェル『そんなわけ無いだろう。あの子兎の顔を見れば、俺に好意を持ってることは明白だ』
サム『デイヴィス』
クルーウェル『なんだ』
サム『誰もあの可愛い小鬼ちゃんの話はしていないよ』
クルーウェル『...』
サム『まあ大方予想はついていたよ。学外で見つけた相手ならもう少し落ち着いていただろうね。でも、キミがそんなに余裕のない顔をしてソワソワするところを見ると、お相手はこの学園にいる者だ』
ニヤニヤと目を細めてからかうように覗き込むと、クルーウェルの眉間にシワが寄せられた
クルーウェル『..誰かに言うか?』
サム『まさか、こんな面白い話は秘密にしておくべきだ。ちゃーんと仕舞っておくさ。それにしても、あの可愛い小鬼ちゃんはとことん罪作りだね。誰も彼もあの子に夢中だ』
クルーウェル『だから困ってるんだ。あいつはきっと誰のものにもならない..いや、誰のものにもなるが、永遠に独占させてはくれない』
サム『見る限り、あの子の"愛"は一人ではなく大勢に向けるものだろうからね。それで?キミは何にそんな悩まされているんだい?このことだけじゃないだろう』
クルーウェル『..あいつにキスをした。2回も』
サム『ヒュー♪やるねぇ』
クルーウェル『だがあいつは"好きでもない相手にキスをしてはいけない"と言ったんだ。俺の気持ちに全く気づきもしない。だから宿題を出したんだ』