第83章 *閑話カームデイ12 〜クルーウェル・一部クロウリー〜*
クルーウェル『言っただろ。書類作業はお前には難しい上に、生徒には見せられない情報が書かれたものもある』
『それだと何もお手伝いできない』
クルーウェル『何を言っている。お前が淹れてくれたコーヒーでリラックスし、そのコートを次着た時に温かくなっていれば寒さに震えることもない。それに..』
『ん?』
クルーウェル『お前が近くに..いや、なんでもない』
『?』
はぐらかされた言葉の続きを聞こうと思うも、既に書類と格闘し始めたクルーウェルを見て口を噤むと、大人しく持参した勉強道具を広げた
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カチカチとかけ掛け時計の秒針の動く音だけが響く。それは決して気まずい沈黙ではなく、心地よく集中しやすいものだった
フワっと頬を擽るコートの毛が心地よく、彼の足元まであるその大きさはレイラの小さな体をすっぽりと包み込んだ
『(おっきくて温かい。先生の匂いと香水..ちょっと苦い匂いもするけど、先生に抱きしめられてる気がして嬉しい)』
コートに鼻を寄せ、香ってきた匂いにうっとりしながら課題を進める。その様子を見ていたクルーウェルはあまりの愛らしい行動に鼓動が高鳴り、気づかれないように悶えていた
『先生、分かんないとこでた。後で教えてくれる?』
クルーウェル『分かった。もうすぐで一区切りつくから、そうしたら教えてやる』
『ん』
暫く待っていると書類の山をデスクの端に置いて立ち上がったクルーウェルは、レイラの横に腰掛けて教科書を覗き込んだ
クルーウェル『どこだ?』
『んとね、ここ』
クルーウェル『ああ、ここは中々に難しいところだな..うん、途中式までは合っている。そこから次に繋げる式からが違う』
『ん〜??』
クルーウェル『よく考えることだな。まずは..』
手袋に包まれた長い指で教科書の文を指差しながら正解へと誘導していく。最初は難しい顔をしていたレイラも、次第に理解し始めていき、クルーウェルの誘導がなくとも答えを導き出せるようになっていた
『こう?』
クルーウェル『そうだ、良くできたな』
頭を撫でて褒めると嬉しそうに目を閉じて耳を揺らし、もっと撫でるようにグイッと近づいた