第83章 *閑話カームデイ12 〜クルーウェル・一部クロウリー〜*
ナイトレイブンカレッジ・クルーウェルの教職室
コンコンと控えめなノックに書類にペンを走らせていた手が止まる。眉間をマッサージしながら疲れた目を休ませ入室を許可すると、控えめに開けられたドアから愛らしい顔がひょこっと顔を出した
『先生』
クルーウェル『今日も時間通りだな。早速こっちに来てコーヒーを淹れてもらうぞ』
『ん』
小さな笑みに釣られるように、クルーウェルにも優しい笑みがこぼれた
『どーぞ』
クルーウェル『ああ、ありがとう』
カタンと置かれた上品な柄のカップからは白い湯気が揺れ、コーヒーの深い匂いが鼻孔を擽る
一口啜り味を吟味する自分の隣でソワソワと反応を待つレイラを横目に、目を閉じて口に広がる旨味に舌鼓を打った
『..どう?』
クルーウェル『2日目にしてもう俺好みに淹れられるようになったな』
『!じゃあ、美味しい?』
クルーウェル『とても美味い。上出来だ、Goodgirl』
『やった..えへへ』
嬉しそうに持っていた盆を強く抱きしめ安堵の笑みが溢れる。そんな様子に目を細めて、クルーウェルはペンを握り再び書類へと向かい始めた
クルーウェル『では俺は仕事に戻る。お前はそこに座っていろ』
自分が座るデスクの横に直角に隣接された横長ソファを指差す。自分のコーヒーを持って素直に座るのを確認すると、思い出したように顔を上げて立ち上がる
クルーウェル『体を冷やすなよ』
フワリとかけられた大きな温もりがレイラを包む。それは普段クルーウェルが愛用しているモノトーンのコートだった
『ありがと。でも、先生のコート..』
クルーウェル『俺のコートを温めておくこと事もお前への罰の1つだ』
『ん..あの、先生..他に何かお手伝いとか』
クルーウェル『大人しくお座りして、俺のコートを着てコーヒーを飲みながらお勉強する。それがお前の罰だ』
『でも、昨日もそうやって..』
先日の事件で勝手に嘆きの島へと行ったことへの罰として、クルーウェルから放課後この部屋へ来て仕事を手伝えと言われていた
しかし、実際に訪れるとさせられたのはコーヒーを淹れること、コートを羽織っておくこと、手伝いではなく勉強していること(自由に過ごすのも可)だけだった