第82章 *閑話カームデイ11 〜カリム〜*
レイラを抱えようとジャミルの手が伸びる。その瞬間、カリムの中の焦りと嫉妬心が限界を超え、ジャミルの手が触れるより前に横からさらうようにレイラを引き寄せ抱きしめた
ユウ『うぇっ!?』
ジャミル『おい、どうした?いきなり大声をあげたりして』
カリム『あ、わ、悪い..でも..』
ジャミル『?..それにそんな乱暴に引っ張ったりするな。レイラが可哀想だろ。ほら、俺が空き部屋にでも運んでくるから、こっちに寄越せ』
カリム『(嫌だ..嫌だ..奪われたくない。レイラだけは、奪われたくない!)〜〜〜っ!!』
ジャミル『っおい!どこに行くんだ!?待てっ!』
こちらへと伸びる腕に嫌だと首を横に振ると、レイラを抱えたまま突然カリムは走り出した
ジャミルの静止の声も振り切って、広い談話室の奥へと逃げていく
『ん、ぅぅ..カ、リムさん..?』
揺れる振動でうっすらと目を覚ましたその視界に映るのは、必死な形相で走るカリムの横顔。まだ回らない頭で目の前の彼の名を呼ぶと、一瞬だけこちらへ視線を向けるがすぐに前を向いた
カリム『来い、絨毯!!』
すると談話室で丸くなって壁に立てかかっていた絨毯が飛び起き、一直線にカリムの方へと飛んできた
ジャミル『!?あいつ、また絨毯を宝物庫から引っ張り出してきてたのか。だが一体何を..まさか!?』
辿り着いたのは談話室を抜けたバルコニー。はあはあと荒い息を吐くカリムの元にヒュンと絨毯が足元で止まるとすぐに乗り込んだ
カリム『頼む、なるべく遠くまで!』
その願いを聞き入れると、カリムたちを乗せた絨毯は浮き上がりバルコニーから砂漠の夜空へと飛び立った
ジャミル『おい、カリム!!どこへ行く気だ!?』
バルコニーの手すりから上空へと叫ぶ。その声に少し申し訳無さそうにしながら振り向いたカリムは大きく息を吸い込んだ
カリム『悪い!!遅くならないようにはするから!!』
それだけ告げると、絨毯は夜の闇へと消えていった。残されたジャミルたちは突然のカリムの行動にぽかんと見つめるしかなかった
ジャミル『まったく、なんなんだあいつ。いきなりレイラを攫って逃げ出すなんて』
ユウ『..無自覚ですか』