第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
〔ヴィル〕
美味しそうに紅茶を飲むレイラを見ながらあたしもまた一口飲む
ここまで流れは完璧
誰もいないテラス席を貸し切ってあたしのオススメの紅茶を飲んで落ち着いた雰囲気を作る。そして軽く談笑して互いに楽しくなったところで
今日あたしはレイラに告白する
勿論、愛の告白。だけど今のあたしは正直言うと平常心じゃない。心臓はさっきからバクバクとうるさくてあの子にも聞こえてるんじゃないかと思うし、気を抜けば声や手も震えてしまいそう
そして何より、その告白を聞いてあの子が嫌がったり、告白をきっかけに今の関係が崩れるのが一番怖い
これでもあたし、かなり臆病なのよ?演劇で鍛えたポーカーフェイスで上手く隠せてるだけで、大事な局面では常に怯えてる
だって目の前の可愛い存在に離れていかれたら、きっと気を保っていられないでしょ。確実に狂ってしまうわ
このあたしがここまで落とされるなんて今までなかった。仕事で共演したどの人間にも抱かなかった烈情が、学園で出会った小兎一匹に炎のように燃え盛る
愛らしい表情、仕草、そんなもの他の人間でも見たことはあるけど、レイラは違った。見慣れたものもこの子が成せばそれは全く別物に変わってあたしの心を揺れ動かすの
気持ちが確定したのはオーバーブロットしたとき
VDCの期間、あたしはこの子にとって嫌な先輩だった。失礼なことを言った。目の前で友人を痛めつけたし、人を陥れようとする醜い瞬間だって見せた
なのにこの子はその身を危険に晒してでもあたしを止めてくれようとした。毒の霧で死の一歩手前まで追い込んでしまったけれど
でも死にかけたっていうのに、あの子はあたしを責めることはせず今もこうして緩んだ顔で、無防備に紅茶を飲んでる
少しおバカだけどそんなところもあたしは好き
決定打は一昨日まで続いたあの事件
ルークたちと一緒に追いかけてくれたことは本当に嬉しかったし、戦いでも何度も危機を救ってくれた。頼りになった反面、繊細すぎて怯えたところも見せたけど、あたしはそんなあの子を守ってやりたいって強く思えた
昨日この子が抱えてるものを聞いた時もあたしが思ったのは、あたしが出来ることで、レイラを守りたいってこと
その想いを全部、この言葉に乗せるわ