第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
ポムフィオーレ寮・ヴィルの部屋
ヴィル『そうしたら、次はアイシャドウ。あんたはどっちかって言うと薄めの方が似合うわね』
『こ、こう..?』
ポムフィオーレに戻り、化粧品ポーチを片手にヴィルの部屋を訪れると、早速彼によるメイク講座が始まった
見様見真似の慣れない手付きで手を動かしていきながらヴィルの指導を受けていた
ヴィル『そう。あんたは筋はいいわね』
嬉しそうに微笑みながら、ヴィルは段々と自分の選んだ化粧品でレイラが美しくなっていく様を優しく見つめていた
『わ..すごい』
鏡に映る自分の変わった姿に目をキラキラさせると、後ろから鏡を見ていたヴィルも満足そうに頷いた
ヴィル『上出来よ。これから先、出かけるときはこのメイクをしていくといいわ。あたしは普段からしてるけど、それは個人の自由だから強制はしない』
『分かった。ありがと、ヴィルさん!』
振り返って輝く嬉しそうな笑顔に心がくすぐられ、気がつくと無意識に頭を撫でていた
『んふふ..』
ヴィル『さあ、道具を片付けて寮服に着替えなさい。出かけるわよ..と言ってもすぐそこだけど』
『??』
ポムフィオーレ寮・テラス席
寮の横に併設されたテラス席は、普段は寮生たちが紅茶を嗜みながら談笑したり、趣味の活動をしたりと賑やかな場所だったが、今回の事件もあってか人の姿は誰ひとりなかった
『誰もいない』
ヴィル『まあ、あれだけのことがあって呑気に外でお茶をするような肝の据わった生徒はいないでしょうね。あたしたち以外』
『お茶するの?』
ヴィル『ええ。あたしのお気に入りの紅茶、あんたにも飲んでほしくて』
『凄く嬉しい』
ヴィル『良かった。さあ、こちらへどうぞお姫様』
恭しく一礼し手を差し出すと、レイラは少しポカンとしたあとクスクス笑いながら、その手に自分の手を重ねた
カップに口をつけて一口飲むと、華やかな香りとほのかな渋みが広がり、それはとても飲みやすく味も好みの紅茶だった
『これ、凄く美味しい..!この味、好き』
ヴィル『でしょ?VDCの前に買ったんだけど、久しぶりに当たりの紅茶だと思ったわ。落ち着いたら、あんたと飲みたいと思ってたのよ』