第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
『..先生が心配してくれてるのは分かってる。でも、あのままここに残ってたら絶対に後悔するって思った。ルクさんが助けに行こうと飛び出すの見たとき、先生にまた怒られちゃうって分かってても、どうしても行きたかったの。足手まといになることは分かってたけど、少しでも助けになればって..』
クルーウェル『...』
『それに、攫われた人たちはみんな、いつも私に優しくしてくれるし、何度だって助けてくれてる。だから、』
クルーウェル『もういい』
静かな中に怒りと悲しみが織り交ぜられた一言が言葉を遮る。あまりにも低いその声にビクッと肩を震わせる
クルーウェルは腰掛けていた椅子から立ち上がると、大股で近づき持っていた躾棒でレイラの顎下に当て上を向かせる
クルーウェル『お前には何を言っても意味がないんだな。俺の心配も言葉も、お前にとっては取るに足らないことだったのか』
『!!ち、ちがっ、』
クルーウェル『なら何故..っ!』
『きゃっ..!』
肩を掴みその場に押し倒すと、上に跨り顔を近づけ苦悶に満ちた表情で上から見下ろす
クルーウェル『お前が学園からいなくなったと聞いたあの日の夜、学園中探して回ってそれでもいなかった。嘆きの島に向かったとすぐに分かったが、連絡も追跡魔法も使えず生死も確認できないまま過ごした2日間が、どれだけ苦痛だったと思ってるんだ』
震える声が彼の本気を表していた。自分がこれほどまでに想われていたことに、胸が掴まれるような感覚が襲う
思わず目の前の今にも泣きそうなクルーウェルの頬に手を伸ばしそっと親指で目元をなぞる
クルーウェル『..なんの真似だ』
『ごめん。先生、泣きそうだったから』
引っ込めようとすると、その手を取られ再び戻されスリっと甘えるように頬ずりされた
クルーウェル『少しは飼い主の言うことを聞け、馬鹿者。今回は死なずに済んだが、一歩間違えれば二度と学園の地を踏むことなんてできなくなるところだったんだぞ』
グレーの瞳が切なげに細められると、体が倒れてきて上から伸し掛かられる。首筋にかかる吐息がくすぐったく、身をよじるが逃さないと言わんばかりに、長い腕が背中に回りきつく抱きしめられた