第80章 *終曲イグニハイド*
マッサージしてやる、とそっと耳に触れて付け根を優しく揉み込む。触られたことにビクッと反応するも、マッサージが気持ちいいのかすぐに体を委ねて、リラックスしたように耳から力が抜ける
『ん、ぅぅ〜〜..きもちい』
ジャミル『獣人は無意識にも耳を動かしたり澄ませたりしているらしい。俺たちよりも疲れて当然だな』
反対側も丁寧に揉まれ、くらついた感覚が徐々に楽になっていくのを感じる。心地よさにこのまま眠ってしまいそうになるのをなんとか抑えつつ、マッサージを大人しく受けた
『...ジャミさん、変わったね』
ジャミル『なにがだ?』
『さっき、カリムさんにお手伝い任せたの。前までだったら自分がやるから座ってろって言ってたのに』
ジャミル『..まあ、な』
『レオさんに何か言われたとか?』
ジャミル『どうしてそう思う?』
『なんとなく。嘆きの島に行ってからジャミさん変わったから、一番一緒にいたレオさんが何か言ったのかなった』
ジャミル『変なところで鋭いよな、お前は..あの人に色々言われて、少しは変えてもいいなとは思っただけだ。それよりお前も少し変わったな。前より少し顔つきが大人びて見えるぞ』
『そうかな..自分じゃ何も変わってないと思う。まだまだ甘えただし、みんなに頼らないと何もできないし、悪い子で弱いまま、だし..』
ジャミル『そう自分を卑下するな。お前は自分が思ってる以上に強いやつだ。それに、俺はお前のその甘えや他人を頼ることが羨ましい』
抱きしめる力を強め耳に唇を寄せて囁く。その言葉は優しく耳から体全体に染み渡るように広がり、心地よい低音が少し落ち込み気味の心をゆっくりと溶かしていく
『私、今のままでいい?』
ジャミル『ああ、俺は今のお前が好きだ。勿論変わりたいなら止めたりしないが、あまり思い詰めすぎるな』
『ん』
ジャミル『..何かあったら頼れ。一人で抱え込むな。お前の抱えてるものの全ては分からないが、共感できるところはある。少しでもそれを共有できれば負担も減るだろ』
『..優しいね』
ジャミル『お前限定だけどな』
『そっか..んふふ、嬉しい。ね、さっきのマッサージもう少しやって?』
ジャミル『気に入ったのか?分かった、もう少しだけな』