第80章 *終曲イグニハイド*
今までなら何か手伝おうとするカリムを必ずといっていいほど止めていたジャミルが、初めてそれをせずに手伝いを許可したことに、傍らで見ていたレイラは少し驚いていた
『(ジャミさん、ちょっと変わった..?)』
エペル『そうだ、僕も林檎ジュースを持ってきてるよ。お茶じゃなくてジュースがいる人いる?』
ヴィル『あたし、林檎ジュース』
『(ヴィルさんも変わった..みんな、変わった
私は..何も)』
エース『っしゃ、追い抜いてやったぜ!』
グリム『あ〜っ!!アイテム投げたのお前か!オレ様の邪魔すんじゃねーんだゾ!』
エース『レースなんだから邪魔するに決まってんじゃん』
オルト『そうそう、レースは追い抜かしていくものだよ。だから、えーいっ!』
エース『ちょっ!?何そのドラテク』
オルト『ふふ〜ん。レースはアイテムだけが全てじゃないんだよ』
エペル『くっ、くっそみんな速ぇ..』
『...』
ユウ『どうしたの?』
『ちょっとお手洗い』
ユウ『そっか』
ジャミル『....』
オンボロ寮・廊下
レースゲームに盛り上がる中、静かに部屋をあとにしたレイラは談話室から少し離れた廊下の壁に寄りかかり、ふぅと一息ついて目を閉じた
『...』
先程の喧騒とは打って変わっての静寂が心地よく、楽しげな声は離れたこの場でも微かに耳を掠めていく
『...ぅ〜..』
ジャミル『どうかしたのか?』
『!!びっくりした』
自分しかいないと思っていた廊下に音もなくこちらへと歩いてきたジャミルに驚きながらも、すぐに表情を戻して真横まで近づいてきた彼にそっと抱きついた
ジャミル『甘えたいのか?』
『ん』
ジャミル『そうか..ワイワイ賑やかなのは嫌だったか?』
抱きしめ返し髪を撫でながら問うと、フルフルと首を横に振って抱きつく腕の力を強める
『やじゃないけど、なんかクラクラしちゃって』
ジャミル『動きの激しいゲーム画面を見続けてたからな。目が疲れたんだろ。そういう時は、蒸しタオルで目を覆うといいぞ』
『ん..』
ジャミル『それと、慣れないゲーム音に耳も疲れてそうだな。お前はこの中で一番耳がいいから』