第77章 *第1タワー Ⅱ*
寂しげな声が耳を掠める
信じていないわけではない。彼の言うことが本心からくるものだと分かってはいるが、どうしても過去のトラウマや日頃抱えている不安が邪魔をする
ルーク『今は信じられなくて構わないよ。私は狩人.."待つ"のは得意なのさ』
『..ごめんなさい』
ルーク『今日の君は謝ってばかりいるね。その悲しい顔が笑顔で満ちるよう、私は全力を尽くすよ』
『ごめ、あっ..ぁぅぅ..』
反射的に謝ってしまいそうになり慌てて止めると、クスクスと喉を震わせて笑われた
ルーク『本当に君と話していると飽きることがないね。このままずっとお喋りをしていたいけれど、私達も少し眠ろうか。すまないね、疲れているのに長話をしてしまった』
『ううん。逆に、話したら少し楽になった気がする』
ルーク『本当かい?君の心を少しでも救えたのなら、嬉しい限りだよ』
『..どうしてそんなに優しくしてくれるの?』
ルーク『言っただろう?君に気に入られるためにご機嫌取りをしていると』
『だからそれは嘘で..』
ルーク『半分本当で半分は嘘と言ったところかな。私はもっと君が知りたいんだ。黒兎だと分かった今でも君にはまだ魅力が詰まっている。それを、1つも残さず暴いてみたい。
だから、こうやって君の懐に潜り込もうと聞こえのいい言葉を贈っているだけ』
ギラリと熱のこもった瞳が近づくと、互いの額が軽くコツンと合わさった。突然の距離感に思わず身が引いてしまいそうになるが、背中と腰に回った腕がそれを許さない
『狩人、さん..?』
ルーク『最初に1つと宣言しておいて申し訳ないが、あと1ついいかな?これで本当に終わりにするよ』
『ぇ..ぁ..んぅ..』
ルーク『ん..』
吐息が掠め、返事を待たずに段々とハンターグリーンの双眸が近づいてくる。抵抗する暇もなくやんわりと唇を奪われた
『だ、め..キスは好きな人と、』
ルーク『以前も言っていたね。好きでもない男にキスをされるのは嫌だろうが..許してほしい。これで"おあいこ"だ..』
『..分かった』
ルーク『もう一度、いいかな?』
その問いに小さく頷くと、頬を僅かに赤らめた狩人は、この時をしっかり己に刻みつけるように、再び目の前の唇を優しく塞いだ