第77章 *第1タワー Ⅱ*
『!!!』
分かりやすく跳ね上がった肩が肯定を意味する。言葉こそ出ないが、内心レイラは焦りと緊張でパニックになっていた
ルーク『..本当なのかい?君があの伝説の黒兎..昔に作られたお伽噺か、実在したとしても、もう滅びたものかと思っていたのに』
『ぁ..え、と..』
ルーク『ん?』
『怖いこと..し、しないで..っ。私..ゃ..』
ルーク『そんなことはしない。君を傷つけるなんてことは..私の全てに誓って。だから教えておくれ、君はあの黒兎なのかい?』
『...ん』
ルーク『ああ、私はなんて運に恵まれているんだ!幼い頃からずっと会ってみたいと願っていた存在と巡り会えるなんて!』
興奮を抑えきれないと言わんばかりに満面の笑みとともに抱きしめる腕の強さが一気に上がる
『きゃぅ..く、苦しい..狩人さん』
ルーク『おっとすまない!つい昂ぶる気持ちを抑えられなかった』
『それと、しーだよ。みんな起きちゃう』
ルーク『そうだね。みんなの貴重な休息の時を邪魔してはいけない。それにしても、やはり君は黒兎だったんだね。君たちの歴史は幼い頃に家にあった古い本で知ったんだよ』
『..どう、思った?』
ルーク『黒兎が世界の戦争の最前線で戦い、類稀な力で敵国を次々滅ぼして、時には人を魅了して操る恐ろしい獣人。戦争の火種、破壊の神、悪の権化..本に書かれていた事を真に受けた多くの人々は、君らをそう呼ぶのだろうね。
だが私はそうは思えなかった。黒兎は望んで戦争の兵になったのではない、本のような恐ろしい者ではなく、力を持った素晴らしい魔法士達だったのではないかとね』
あくまで私の想像だが、と付け加えると、少し落ち着いた様子でレイラを抱え直した
ルーク『でも君が黒兎だと分かって、私の想像は正しかった。君のような愛らしく、強く、優しく、素晴らしい人が、恐ろしい怪物のような存在であるはずがない』
『ほんとに、そう思ってくれる..?』
ルーク『勿論だとも。人の本性というものは今回のような危機的状態にあればあるほど表に出やすい。ずっと君を観察してきたが、少し繊細すぎるのを除けば、仲間思いの強く愛らしい女性..ここに来るまでに思っていた印象通りだ』
『...』
ルーク『信じられないかい?』