第77章 *第1タワー Ⅱ*
頬に添えられた手の親指が優しく目元をなぞる。その瞬間熱いものが溢れてしまいそうになり、見られまいと顔を俯かせる
『..私、またみんなに心配かけたり、不安になってこんな風に言葉をかけてもらうことがあるかも、しれない。それでも..いい?』
ルーク『むしろ大歓迎さ!その代わり、私達が同じ状況に陥ったなら、その時は今度は君が助けてほしい』
『約束する。絶対、私が助けるから』
ルーク『ふふ、良い瞳をするようになったね』
一安心したよ、と今度は反対の手でレイラの髪を指先で優しく整えるように撫でる
『ぁ..』
ルーク『少し乱れていたから。急に触れてしまって失礼だったね』
『ううん、ありがと..ねぇ、腕痛くない?気分悪いのまだある?』
ルーク『いいや。さっきエペルくんがくれた魔法薬が効いてきたのか、今はもうだいぶ楽になったよ』
『..そっか。ごめん..なさい』
怪我をした方の腕にそっと手を添えながら、未だに残る罪悪感に目を伏せる
ルーク『謝る必要はないと言っただろう?寧ろ君を守った勲章とさえ思っているくらいだ』
『でも..』
ルーク『..ふむ。なら1つ、今ここで私のお願いを聞いてもらえるかな?それでこの件はおあいこにしよう』
『?分かっ..た。何すればいいの?』
首を傾げて問うと、ルークは曲げていた膝を伸ばしそっと両腕を広げた
ルーク『おいで』
『...ん』
誘われるまま、伸ばされた彼の膝を跨ぎながら向かい合う形で座る。すると両肩に手が置かれ、まるでご機嫌を伺うように少しずつ背中と腰にスルスルと降りていく
そのままゆっくりと抱き寄せられ、彼の胸にもたれ掛かる形でその腕に収まった
ルーク『こうしてハグをすると、疲れやストレスが軽減されるという話を聞いたことはあるかな?』
『ん..』
ルーク『..(なんだ、この芳しい匂いは..?彼女から発せられているのか?優しく、それでいて心が昂ぶる。気のせいか体の痛みや気分の悪さが治まっていくような..まさか)』
微かにふわりと漂ってきた香りがルークの体を癒やしていく。心地よさを感じながらも、彼の中には一つの仮定が確実なものへと変わる
ルーク『レイラくん、もし違っていたなら謝ろう。
君は、まさか伝説の黒兎なのかい?』