第77章 *第1タワー Ⅱ*
それ以上は涙をこらえるために紡がれることはなかった。小さく耐える声と体の震えが、ルークにはこれ以上ないくらいに痛々しい姿に見えた
ルーク『..君はとても繊細なんだね。だけど兎の君、君は何か勘違いをしているよ。人より優れている何かを持っているからといって、どんな時でもそれを寸分の狂いなく発揮しなくてはいけないということはないんだよ』
『でも、それじゃあ足手まとい..』
ルーク『それも君の勘違いだ。このチームを組んでから、我々が君のことを足手まといだなんて言うことが一度でもあったかな?』
『..言わなくても、思ってるかもしれない』
ルーク『そうだね。他人が自分をどう思っているかなんて、正確には測れない。だけれど、もし君を足手まといだと思っていたなら、ヴィルは即座に君に告げていただろう。彼は物事をハッキリと伝える性格だ。いくら今みたいな切羽詰まった状況でも、きっと面と向かって伝えていたはずさ。
だから、なんて説得力に欠けてしまうかもしれないけれど、これだけは分かって欲しい。いや、信じてほしい..
我々とって君は、なくてはならない大切な存在であると同時に、とても頼りになる戦友、そして守るべき対象だということを』
その言葉に顔を上げると、真剣で真っ直ぐな瞳に射抜かれ、かけられる言葉が柔らかく心を包み込んでいく
『..役に、立ててる?また上手く出来なくても、大丈夫だよって言ってくれる?』
ルーク『勿論だとも。それに、君はその優れた聴力の他にも素晴らしいことを沢山しているじゃないか』
『?』
ルーク『そもそも戦いでは見事な流れでファントムを倒し、我々の危機だって何度も救ってくれた。君の魔法は決して弱くない。
自覚はないかもしれないけど、鋭い観察眼で細かなサポートだってしてくれる。そしてなによりも、君自身が助けになっているんだ。君のふとした時の笑顔は私達の心を温め、癒やし、驚いたり怒ったりすると心が揺れる。仕草や視線、それら全てがこのチームに強く影響する』
途中で止めた手を再び伸ばすと、白く柔い頬にそっと滑らせる。手袋越しに伝わる温もりに、何故だか目元が熱くなっていく
ルーク『ヴィルも言っていただろう?"自信を持て"と。私達は仲間でチーム。互いに助け合って然るべきだ。君がまた不安にかられて足が竦むなら、全員で助けるよ』