第77章 *第1タワー Ⅱ*
いくら長時間に渡る連戦から来る疲労が溜まっていたとはいえ、索敵に失敗した上にその身を危険に晒す形で助けられ、挙句の果てにルークに怪我を負わせ、自己嫌悪に陥ったことでチーム全体に迷惑をかけた
そのことがずっと重りのように小さな体の上にのしかかっていた
膝に顔を埋めて涙がこぼれ落ちるのを我慢する
『ぅ..っ..』
ルーク『隣、いいかな?』
『!!狩人、さん..』
顔をあげると、いつも通りのニッコリとした笑みを浮かべて、こちらの返事を待たずにルークは隣へ腰掛ける
ルーク『眠らなくていいのかい?君も相当体力と魔力を消費したはずだよ』
『...』
ルーク『レイラくん?』
無言で再び俯かれ、疑問に思ったルークは静かに手を伸ばした
『..ごめんなさい』
小さく呟かれた謝罪が、伸ばした手を触れる寸前でその動きを止めた
ルーク『どうして謝るのかな?君は何も悪いことなんてしていないよ』
『だって..』
ルーク『うん』
『だって..怪我、させた』
ルーク『腕のことかい?それなら気にする必要はないよ。あれは私が勝手に君を助けた際に、勝手に受けた傷なのだから』
『..私がちゃんと周りの音聞けてたら..ファントムの場所が分かってたら、狩人さんが私を助ける必要なかった。そうしたら、そんな怪我させなくて済んだのに..』
溢れ出そうな感情を押さえつけるように、身にまとったポムフィオーレの寮服の裾を力強く握りしめる
ルーク『先程、少し取り乱した様子だったのは、それを気にしていたからかい?』
『ん..林檎くんの時もそう。私がちゃんとしてなかったから、助けられて..でもそのせいで林檎くんを危ない目に遭わせちゃった』
ルーク『...兎の君。君が思う"ちゃんとする"とは、どういう意味なのかな?』
『..この、耳で..周りの音を聞いて、ファントムの場所を探し出して、早くみんなに伝える。それで、戦いの役に立たなきゃいけない』
ルーク『それは、どんな状況下でも確実にこなさなくてはいけないことかい?』
『っ、だって!それしか..それしか出来ないっ。魔法も体力もみんなより弱くて..でもヴィルさんが私の耳の良さを褒めてくれたから!だからせめて、せめてそれだけは..』