第77章 *第1タワー Ⅱ*
ファントムはうめき声をあげてインクとなって消えていった
ルーク『格納庫でしっかり休憩しておいてよかった』
ヴィル『そうね。タイタンとの連戦だったら危なかったかもしれないわ』
エペル『もう!ヴィルサンとルークサンの出会いの話を聞こうとすると、すぐ邪魔が入る!』
ルーク『ははは!余裕だねエペルくん』
エペル『余裕があるわけじゃないですけど、やっぱり自分の寮の寮長と副寮長のことだし気になる、かな』
ユウ『寮生じゃないですけど気になります』
『同じく』
ルーク『たしかヴィルが中庭で台本を読んでいたところに、私が声をかけたんだ。うららかな午後の光の中、優雅にベンチに腰掛けたヴィルの姿は一枚の絵画のように美しかった』
声をかけるのにとても緊張した、と懐かしむルークを横目に、嘘おっしゃいとヴィルは冷ややかな視線を送る
ヴィル『とても緊張してるとは思えない態度だったわよ。忘れもしない最初の会話は..』
2年前の冬の日、雪もまだ地面や木の上に残っていた。払われたベンチに腰掛けたヴィルの横に、ふと一つの人影がさす。そしてその人物は声高に口を開いた
"やあ!先日君が出演している舞台を見たよ。君の演技は他の演目で何度か見てるはずなんだけど、どれも印象に残ってないんだ。でも、今回の悪役ぶりは見事だった!あれほど横暴で冷徹でヒステリックで最低な人間になりきれる役者は、なかなかいないよ!"
ヴィル『それがあたしとルークの出会い』
エペル『う、うわ..』
あまりの衝撃発言から始まったファーストコンタクトに、さすがに期待していたエペルたちからもドン引きの声が上がった
ユウ『すごく良かったよってだけ言えばいいのに』
『...狩人さん、素直に言い過ぎ』
ルーク『オーララ..私からすれば最高の褒め言葉だったんだけれど』
ヴィル『だとしても、思ったことを全部口に出し過ぎなのよ。当時は、"何だこの失礼なやつは"と思った』
エペル『それはそう思われても当然..かな』
ユウ『レイラだったらどうする?』
『こうする』
そう言うと闇の手を一本出現させ、そこら辺に落ちていた手の平サイズの石を掴み、勢いよく握りつぶした
バラバラとこぼれ落ちる石にゾッと寒気が全員の背を走った