第77章 *第1タワー Ⅱ*
真剣な眼差しで意気込む二人に、ヴィルは嬉しさや頼もしさを感じ、小さく笑みを浮かべて問いかける
ヴィル『いつもは止めたって前に飛び出していくくせに、急にしおらしくなっちゃってどうしたの?』
ルーク『フフ..自分の弱さを認めること。それは前よりも強くなった証拠だね。しかしムシュー・姫林檎もユウクンも、そう気負うことはないよ。君たちは既に充分なやるべきことをやってくれている』
ヴィル『ルークの言うとおり。今無理をして、後でヘバラられたほうが迷惑だわ』
エペル『う..わかりました』
ルーク『でも、ヴィルが大きな荷物を運んでいるのを見かけたら、代わりに荷物運びを申し出たくなる気持ちはよく分かるよ!入学したての頃は購買部や麓の町へ買い物に行くと聞けば、率先して申し出る者が多かった。時にはポムフィオーレ生でなく、他寮生まで混じっていたほどさ。
人だかりあるところにヴィルあり、という感じでね』
ヴィル『あんなのは芸能人が物珍しくて寄ってきていただけよ。数ヶ月もすればほとんどの生徒が飽きたわ』
ルーク『飽きたというよりも、君のストイックさに追従できる生徒が少なかったというほうが正しいかな』
エペル『あっ、じゃあもしかして..ヴィルサンとルークサンの出会いって、荷物持ちがきっかけ?』
ヴィル『まさか!ルークがあたしに声をかけてきたのは、ミーハーなじゃがいもたちがすっかりいなくなった頃。今は勉学に集中するために、長時間公演をする舞台や映像作品の撮影はほとんど断っているけど..一年生の頃は、入学が決まる前に引き受けていた舞台や映画の仕事をいくつか継続していたの。それで、次の舞台に向けて中庭のベンチで台本を読んでいたら突然..』
?『キシャァアアアア!!!』
言いかけたヴィルの言葉を遮るように、つんざくような鳴き声が辺りに響き渡った。すると前方から黒い靄をまとった大型のファントムがこちらに向かって来ているのが見えた
『『『!!!??』』』
ルーク『ファントムだ!今まで出会ったものより明らかに大きいぞ!』
エペル『ユウ、下がって!』
ユウ『分かった!』
『ユウは私が守る』
ユウ『やだ..今日のレイラ、やっぱりカッコイイ』