第76章 *第1タワー*
?『ギィイイイイ..!やっとジユウにナレたとオモったのニィ..!』
悔しげな声が響き渡り、ファントムはインクとなって溶けて消えた。すると溶けたファントムからカツンと硬いものが落ちる
ユウ『あ、IDカードじゃない?』
エペル『あのファントム、人の言葉を喋ってた。研究員のふりをして僕たちをおびき寄せてたってこと?』
ヴィル『まさか言葉を話すファントムがいるなんて』
ルーク『..声帯模写などを行い、獲物をおびき寄せる獣や鳥はたくさんいる。それにファントムとは、元々実力ある魔法士から派生した存在だろう。高い知能を有していても、なんら不思議ではない』
エペル『お、おっかねぇ..にしても、よく研究員じゃないって気づいたね』
『扉が空いた瞬間、すごくやな感じしたの。人がいる雰囲気じゃなかった』
エペル『止めてくれてありがとう。あのまま近づいてたら、ファントムにいの一番に襲われてた』
『んふふ..褒めて』
エペル『よ、よしよし..えらいね』
『〜♪』
ユウ『(泣)』
ヴィル『階層が深いほど危険なファントムが収容されている..なるほどね。目的のIDカードは手に入った。すぐにこの収容所から出ましょう』
ファントムが落としたIDカードを拾い上げると、一行は足早に収容所を後にした
S.T.Y.Xタルタロス-非常階段
再び最下層を目指し歩いていると、最初の階層にいたときよりも体に感じる肌寒さが、強くなっていることに気づいた
ヴィル『入り口からかなり下ってきたはずだけど.. どんどん気温が下がるわね』
ルーク『冷気が足元から吹き上げてくる』
エペル『寮服を着ていてもちょっと寒い..かな』
腕をさすりながら軽く身震いすると、ルークが着せてくれた寮服のありがたさを改めて感じた
『ふ..ぅぅぅ..』
人一倍寒さに弱いせいか震えが止まらず、思わず目を強くつむると、優しく肩に手が置かれそっと誰かが寄り添った。片側からの温かい感触に驚いて目を開けると心配そうに見つめるハンターグリーンがあった
ルーク『大丈夫かい?』
『...ん..あ、りがと』
ルーク『暫くこのままでも?』
『ん』
小さく頷くと"メルシー"と呟き、彼の笑みが少しだけ深まった