第76章 *第1タワー*
暫く歩いていると、行く先の方でふと動く影が目に飛び込み、ルークはその場で歩を止めた
ルーク『..ん?階段の奥から何か歩いてくる』
その言葉に全員が足を止めてよく目を凝らすと、小さな影がユラユラ歩きながら向かってきているのが分かった
エペル『あのサイズ、もしかしてグリムクン?おーい、グリムク..ふがっ!』
声を上げて手を大きく振ろうとするエペルだったが、素早く近づいてきたルークの大きな手で口を塞がれる。何事かと彼を見上げると、狩人の瞳は遠くのその影を睨みつけていた
ルーク『いけないエペルくん!グリムくんじゃないよ。彼よりも体長が10センチほど低い!』
『それに、やな声してる』
するとその影もこちらに気づいたのか、大きく唸りながらこちら側へと走り始めた
ヴィル『すごい勢いでこっちに走ってくる!構えなさい!』
各々がペンを構えると、影は飛び上がってその牙を向いてきた。その正体はグリムではなく小型のファントムで、禍々しいオーラを放っていた
ヴィル『これぐらいなら..えっ!?』
次の瞬間、目の前に飛びかかってきたファントムが一瞬にして消え、ドガンッ!!という音ともに壁に叩きつけられていた
そのファントムの頭のビンを黒い手のようなものがしっかり掴んでいて、それによって壁に叩きつけられたのだと、全員一瞬で理解できた
ユウ『あの手って..』
『これぐらいの大きさなら、持ち上げられる』
魔法石を輝かせるペンをファントムへと突き出していたまま、レイラは何食わぬ顔で闇の手を操る
『ヴィルさん、今のうち』
ヴィル『ええ』
闇の手によって身動きが取れずジタバタともがくファントムにヴィルがとどめを刺すと、インクのように溶けたファントムは地面に吸い込まれていった
エペル『たげ、早ぇ..ヴィルサンたちよりもファントムを捕まえぢまっだ』
ユウ『さすがレイラ。もうその魔法は使いこなしちゃったね』
『えらい?褒めて』
ユウ『えらいえらい。よしよし..』
ユウの腕に抱かれ頭を撫でられ嬉しそうに顔をほころばせる姿を離れたところで見つめていたヴィルとルークは、しばしの間ぽかんとしていた
ヴィル『驚いたわ。案外戦いに慣れてるのね』
ルーク『これは、頼もしい限りだね、ヴィル』