第76章 *第1タワー*
ヴィル『特に、レイラ。あんたは魔法の扱いも体力もこの中じゃ一番下だって分かってる?VDCの時も思ったけど、下手に無茶をして自分を傷つけて、それを見た周りがどれだけ迷惑したか考えた?
自らを守れず、それによって他人に迷惑をかけてる奴に、助けに来られても困るわ』
『...』
ユウ『先輩、そのへんにしてもらえませんか?流石にこれ以上は、』
ヴィル『魔法の"ま"の字も使えず、守られてばかりの一番のお荷物は黙ってなさい』
ユウ『ア、ハイ、スンマセン』
『...ごめんなさい』
悲しげに床へ視線を落としたレイラの耳はペショッと垂れていた。痛いくらいの沈黙の後、一息はいたヴィルはその怒りの表情をそっと緩めた
ヴィル『..本当に馬鹿なんだから。さて..ポムフィオーレ寮長として言わなきゃならないことは、もう全部言った。これから先は、"ただの"ヴィル・シェーンハイトとして話をする』
ルーク『え?』
ヴィル『本当はね..あんたたちが嘆きの島へやってきたとイデアから聞いたとき、嬉しくて仕方なかった。さっき顔を見たときから、ずっと我慢してたの。
あなたたちを抱きしめて、キスをしても?』
『『えっ、えっ..!?』』
突然の発言に単調な声しか出ないでいる二人をよそに、少し弾んだような声で四人に足早に近づくと、ルーク・エペル・ユウの順番にそれぞれ抱きしめて頬へとキスを落とした
ユウ『世界的モデルが、ほっぺにキス!?』
ヴィル『レイラ』
『!!ん..』
先程叱られたこともあってか、名前を呼ばれた瞬間ビクッと体を震わせ、恐る恐る目の前まで来たヴィルを見上げる
次の瞬間、体が優しい温もりに包まれたかと思うと、そっと頬、ではなく唇スレスレの端に触れるだけのキスが落とされる
『ヴィル、さん?』
顔を離したヴィルの表情は愛しい人を見つめる、まるでユウやエース、デュースたちが自分を見つめるときの、レイラが一番知っているそれと同じだった
ヴィル『あんたには感謝してもしきれない。必ずあたしが守って見せるわ。それと、学園に戻ったらあんたに伝えたい大事なことがあるの。聞いてくれる?』
『ん..ちゃんと聞く。だから、絶対みんなで一緒に帰ろうね』
ヴィル『ええ..ありがとう』